「初優勝が生まれる初場所」の流れを、阿炎がつなぐか-。西前頭6枚目の阿炎(27=錣山)が関脇隆の勝を突き出して2桁10勝をあげ、2敗を守った。横綱照ノ富士、関脇御嶽海が相次いで敗れ、トップに並んだ。そして13日目は、御嶽海と生き残りをかけた大一番に臨む。初場所は6年連続で初優勝力士が誕生。その流れに阿炎が乗る。

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阿炎が力強く伸びる腕で初優勝の望みをたぐり寄せた。関脇隆の勝に何もさせない。最後はグイッと左腕を伸ばして突き出した。「攻められたのでよかったと思う。朝、師匠(元関脇寺尾の錣山親方)から『引かない方がいいぞ』と言ってもらったんで、自分の相撲をとりきれました」と金言に感謝した。

その前の土俵で御嶽海が、その後の結びで横綱照ノ富士に土がつき、優勝争いのトップに並んだ。さらに13日目は御嶽海との直接対決が組まれた。にわかに過熱してきた優勝争い。主役の1人に浮上したが、「意識はしていない。集中して自分の相撲をとりきるだけ」と言った。

2年前の7月場所中。やんちゃが過ぎて日本相撲協会のガイドライン違反で出場停止処分を科せられた。力士生命を断たれていたかもしれない危機を師匠らに救われ、感謝の一念で生まれ変わった。外出などせず、午後10時には部屋を真っ暗にして就寝。早起きして稽古場におりる。そこで「腰が高い」と反省すれば、修正してきた。

幕内に復帰した先場所も優勝次点の12勝をあげた。連続の2桁勝利は、復活というより進化した実力の証明といえる。「幕内に定着するまでは」と鬼の思いで別居していた夫人、愛娘との同居も近い。そのハッピーな出来事に初優勝を加えたい。「(優勝チャンスだが)そんなこと言っている暇はないので、自分のできることを優先していく」。先場所は残り2番に連敗。初場所7年連続初優勝力士誕生へ、勝負のラスト3日に挑む。【実藤健一】