日本相撲協会は名古屋場所13日目の22日、追手風部屋の平幕の遠藤ら、新たに4部屋で新型コロナウイルスの感染者が判明したことを発表した。伊勢ノ海部屋、追手風部屋、片男波部屋、芝田山部屋の力士らがこの日から休場し、関取以上の休場数は21人で戦後最多。中入り後の取組では5番連続を含む、18番中7番が不戦となる異常事態となった。新型コロナ関連での力士らの途中休場は7日連続11部屋目で、場所前に感染判明が判明した田子ノ浦部屋を含めると計12部屋目。残り2日とはいえ、土俵上では日に日に危機感が高まっている。

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異様な光景だった。幕内前半戦の錦富士-翔猿の一番。呼び出しが土俵に上がり「不戦勝」の旗を掲げた。続けざまに、その後の一番でも「不戦勝」の旗。幕内後半戦に入り、審判団が交代した後の一番からも、さらに3番連続で「不戦勝」の旗が掲げられた。観客からはたまらず、驚きの声や落胆するかのような声が漏れた。この日は計7番で不戦。幕内後半戦の粂川審判長(元小結琴稲妻)は「お客さんに申し訳ない。高いお金を払って見に来てもらっている。でも状況が状況。理解してもらうしかない」と言うしかなかった。

この日だけで新たに4部屋で新型コロナ感染者が判明した。これで7日連続。関取はこの日だけで8人が休場し、関取以上の休場者数はケガ人も含めて21人と戦後最多だ。伊勢ノ海部屋の平幕の錦木は、12日目終了時点でトップと2差につけ、優勝争いに絡んでいた。これまでも優勝争いに絡んでいた力士が休場するなど連日、盛り上がりに水を差す事態が起こっている。

止まらない感染拡大に協会も頭を抱える。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「全国的に見ても相撲部屋は厳しい対策を敷いてきたつもり。今回ばかりはお手上げです」と話した。相撲部屋は1つ屋根の下での団体生活を送っているだけに、感染対策には常に高い緊張感を持っている。故に「警戒レベルは5。これ以上の対策となると全員が防護服を着て個室に入るしかないよ」と言うしかなかった。

ただ、この状況を見過ごす訳にはいかない。「専門家の先生の話を聞かないといけないけど」と前置きしながらも、新たな対応策を練る段階にきているという。「例えば、感染していない人は複数回検査して陰性だったら出場させるとか」と検討案を明かした。実現させるには各方面と多くの協議を重ねる必要があるが、感染していない力士らの出場案を模索していく方向だという。「そうじゃないと幕内の取組が5番しかないとかになりかねない」と危機感を口にした。

あと2日。いや、まだ、あと2日と先を見据えれば気が遠くなるほどの感染拡大。芝田山広報部長は「残り2日。何とか」と悲愴(ひそう)感を隠せない。優勝争いは横綱照ノ富士と初優勝を狙う平幕の逸ノ城がトップで引っ張る。終わりの見えない闘いは、まだ続きそうだ。【佐々木隆史】