高安らしい立ち合いの当たりが全てでした。かち上げから突き放してタイミングのいい突きが決まりました。あの圧力をかけられては霧馬山もたまりません。ここまで今場所はとにかく立ち合いの当たりがいい。

好調の要因はいくつかあります。1分を超える相撲が必ずといっていいほどある高安ですが、それが今場所はありません。勝負が早く後半戦にも余力を残しています。疲れがなければ気力でカバーできます。2人目のお子さんが生まれたことも大きい。私の経験でもすごい力になりました。優勝賜杯と一緒に写真撮影できると思えば、目に見えない力になります。あとは12日目に、春場所の優勝決定戦で敗れた若隆景に勝ったことです。たとえ今場所、優勝したとしても若隆景に負けていたら土俵人生に納得のいかない、悔いの残るものになったでしょう。それほど精神的に気を良くする白星でした。

残り2日です。優勝争いに絡む後半で、緊張すると立ち合いの当たりが悪くなるのが、これまでの高安でした。とにかく迷わず、怖がらずに当たることです。14日目に当たる豊昇龍は2日連続の投げで勝っていますが、投げへの対処法も高安は持っています。想定は頭に入れた上で、とにかく当たることです。(日刊スポーツ評論家)