西前頭9枚目阿炎(28=錣山)が、大関貴景勝(26=常盤山)、東前頭筆頭の高安(32=田子ノ浦)ととのともえ戦を制し、悲願の初優勝を果たした。

本割で2敗の高安を3敗に後退させ、結びの一番で大関貴景勝が3敗を死守。賜杯の行方は94年春場所以来、28年ぶりのともえ戦で争われ、28歳の阿炎が勝ち抜いた。

一年納めの場所を制したのは、先場所けがで全休した平幕の阿炎だった。けが明けとは思えない体の動きから前に出る相撲を貫き、初日から3連勝するなど勢いに乗った。1月の初場所以来となる2桁白星で敢闘賞も獲得。千秋楽の本割で高安を退けても気持ちを切らさず、貴景勝、高安との3人による優勝決定戦でもしっかり2連勝と勝ちきった。

千葉・流山南高を卒業後に13年夏場所で初土俵を踏み、「やんちゃな性格」同様に勝ち気な突き押し相撲で早くからファンの注目を集めた。15年春場所で新十両、18年初場所で新入幕、19年名古屋場所で新小結と順調に番付を上げた。将来の大関候補に推す声も少なくなかった。

名古屋場所後の今年7月末に手術した右肘と左足首の影響で秋場所を全休し、迎えた今場所。場所前に師匠の同親方からの言葉が生きた。「リハビリみたいなもの。負けても勝っても思い切りやりなさい」と言われ、勝ち負けよりも内容にこだわった。結果的にそれが好循環につながり、ともえ戦を2連勝で制して初優勝を手にした。

◆阿炎政虎(あび・まさとら)1994年(平6)5月4日、埼玉越谷市生まれ。千葉・流山南高から13年夏場所初土俵。15年春場所新十両。18年初場所新入幕。19年名古屋場所新小結。新型コロナウイルス対策のガイドライン違反で20年秋場所から3場所出場停止処分。殊勲賞1回、敢闘賞4回。得意は突き、押し。187センチ、151キロ。