小結大栄翔(29=追手風)が、13場所ぶり2度目の優勝に王手をかけた。

取組前まで3敗の翠富士を突き倒して12勝2敗。単独トップを守った。翠富士と同様に、3敗だった小結若元春も敗れ、優勝の可能性は不戦勝の関脇霧馬山と、2人に絞られた。千秋楽は結びで霧馬山との直接対決が決定。初優勝した21年初場所に続き、自己最多に並ぶ13勝目で、2度目の優勝を飾るつもりだ。

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優勝を争うライバルを、直接対決で引きずり降ろした。大栄翔が休まず手を出し続けて完勝した。立ち合いで一瞬、下に潜り込もうとした翠富士の動きを、よく見て狙いを定めてもろ手突き。11センチ低い171センチの相手の上体を、同じ高さまで突き起こすと、狙いやすくなった胸に的を絞り、突き続けた。4連勝とした自身とは対照的に翠富士は4連敗。取組前までは3人いた1差の3敗勢は、千秋楽を迎えて1人となった。

「落ち着いて、相手をしっかりと見て攻められたのでよかった。いろいろと考えて、ああいう立ち合いになった」と、相手が変化ぎみに動いてくることも想定していた。何よりも体が自然と反応する状態の良さがある。人一倍大きな手で圧力を伝えやすい突きに注目が集まるが、大栄翔の好調を支えているのは実は下半身。回転の速い突っ張りを繰り出せるのも、ブレない足腰があるからだった。

初の十両優勝直後、再入幕した17年春場所8日目の隠岐の海戦で気付きがあった。「足がめちゃめちゃ出た。自分じゃないみたいに出て『これだ』と思った」と押し出した。懐の深い相手に初顔合わせでは敗れ、2度目の対戦。経験豊富な長身相手に、単純に突いて出ると組み止められる中、足を使って低い重心から突くと、圧力が伝わった。この場所で11勝して以降、1度も十両陥落はない。成功体験が、今を支えている。

千秋楽は結びで3敗の霧馬山と直接対決。相手は14日目が不戦勝だけに体力温存で臨んでくる。それでも大栄翔は「最後の一番。思い切り自分の相撲を取りたい」。手が出て、足も出て、気力は充実。2度目の優勝へ死角はない。【高田文太】

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