4場所連続休場明けの横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、過去9戦全勝と合口のいい関脇霧馬山(27=陸奥)に貫禄勝ち。寄り切って、ちょうど1年(6場所)ぶり8度目の優勝を遂げた。

合口がいいとは言え、相手は大関昇進を確実にし、優勝争いでも1差にピタリとつける霧馬山。左おっつけ、右からのいなし、右前まわし探りながら頭をつけるなど、横綱攻略に万策を尽くした。それでも横綱は冷静に対処。腰を低くドッシリ落とし、寄り切った。

霧馬山が勝てば、3敗の朝乃山(29=高砂)を含め3人に優勝の可能性を残し、千秋楽を迎えるところだった。報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、取組前に「照ノ富士は力強いし体も柔らかい。(霧馬山とすれば)二本差すより前みつだろう」と、霧馬山の勝機を探るように展望していた。白熱した一番が終わると開口一番「よく頑張った」と、1人横綱の重責を果たした照ノ富士を称賛。続いて霧馬山について「攻めきれなかった。まわしを取られても、自分から勝負しないと(ダメ)」と敗因を分析した上で、さらに「よく頑張った。(照ノ富士の優勝は)最高でしょう。精神的に、やはり横綱。よく頑張ってくれた」と再び、休場明けVをたたえていた。

土俵下で見守った藤島審判長(元大関武双山)は、照ノ富士の気迫を見逃さなかった。「相当、集中していました。気迫が入ってましたね」と仕切りから発散される横綱の気合を感じ取った様子。さらに「初日に正代に、すくい投げで勝ったと思いますが、あれで『動けるんだ』というを、つかめたと思います。残すところは残し、攻めるところは攻める。ただ、精神的に普通の人とは違うんです。すごいものを背負っていて、成績いかんでいろいろなことが起こるかもしれない」と、負けが込めば進退問題に発展するかもしれない横綱の重責を強調。それを克服しての優勝を、称賛に値するものと評価した。