横綱昇進に早くも黄色信号が灯った。大関琴桜(27=佐渡ケ嶽)は東前頭2枚目翔猿に引き落とされ、前日に続く黒星を喫した。これで1勝2敗と黒星先行。年6場所制となった58年以降、昇進直前の場所で連敗を喫していた横綱は皆無。3日目で2敗を喫した例もない。データ上では今場所での昇進確率0%という窮地に立たされた中で、前例を覆せるか。
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土俵下で上体を起こした琴桜が、ぼうぜんと土俵を見上げた。館内に悲鳴とどよめきが広がる。翔猿の引き技にはまり、3日目にして2敗目。綱とりに早くも暗雲が垂れ込めてきた。
立ち合いで相手の右差しを許した。抱えた左で小手に振り、いったん離れた。突き合いのあと左を入れて前に出たが、土俵際で引き落とされた。前日の阿炎戦に続く黒星。支度部屋では報道陣の問いかけに対し、「切り替えます」とだけ短く答えた。
この日の幕内後半戦の審判長を務めた審判部の高田川部長(元関脇安芸乃島)は、琴桜について「勝負をしにいっていない。勝ちにいっている」と指摘。立ち合いから過度に慎重になっていると分析した。それでも綱とりの可能性は「途切れたわけではない」と強調。「2連敗したことで、かえって吹っ切れて力を出せるかもしれない。自分が周りを引きずり落としていけばいい」。積極的な取り口で巻き返すことを期待した。
横綱審議委員会(横審)の内規には「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」が横綱昇進の条件とある。3日目を終えて勝ちっぱなし力士は8人いるが、そのなかで横綱大関陣は豊昇龍1人のみ。琴桜にもまだまだ可能性はある。14勝1敗で初優勝した九州場所でも、3日目に黒星を喫したあとすべて白星を並べた。
とはいえ、数字上では極めて厳しい状況に追い込まれたことも事実。年6場所制となった58年以降で横綱は29人いるが、昇進直前の場所で連敗していた例はゼロ。さらにいえば、3日目で2敗を喫した例も見当たらない。過去のデータに照らせば、今場所での昇進確率は0%と絶望的だ。
この日の朝稽古後、琴桜は静かな口調で言い切った。「人任せの人生じゃない。自分のやるべきことをやっていくしかない」。綱への道を自ら切り開く。【奥岡幹浩】

