大相撲の横綱豊昇龍(26=立浪)が4日、九州場所(9日初日、福岡国際センター)に向けて、福岡市の高砂部屋に出稽古した。ともに十両の朝乃山、朝白龍と連続で16番取って13勝3敗だった。10月に5日間連続で開催されたロンドン公演で、横綱大の里との全勝対決を制して優勝。帰国後は部屋で稽古を重ね、今場所前の出稽古は初だった。それでも鋭い踏み込みから、右を差して一気に寄り切ったり、すくい投げで転がしたりと、朝乃山を8勝2敗、朝白龍を5勝1敗とし、実力を示した。
9月秋場所の十両土俵で、朝白龍は13勝2敗で優勝し、朝乃山はそれに次ぐ12勝3敗だった。大関経験者の朝乃山はもちろん、ともに幕内とも遜色ない実力者。土俵をならすインターバルを挟みながら、計16番を17分で取り終えるハイペースな稽古は、何よりもスタミナ健在をアピールした。稽古後は「いいんじゃない。立ち合いも、いい感じに当たれている。悪くない」と、納得の表情で振り返った。
千葉・柏日体高(現日体大柏高)で、モンゴルから同じ飛行機で来日した豊昇龍と朝白龍は無二の親友だ。先場所で新十両に昇進した朝白龍に「そのうち、高砂部屋に行くから」と約束しており、それがこの日になった。ぶつかり稽古で豊昇龍は、朝白龍に約3分間胸を出した。その間に「懐かしいな」と、高校時代を思い出しながら稽古したり「早く(幕内に)上がってこいよ」や「(十両)優勝しろよ」と激励したり、親友ならではの声掛けを繰り返した。
高砂部屋に出稽古したのは「小結の時以来」と、3年ぶりだという。「朝乃山さんと稽古するのは、2年前の春巡業以来。体が大きくて、相変わらず柔らかい。ジャミン(朝白龍)は先場所も十両で優勝しているけど、胸を合わせたら力が強いね。いい稽古ができた」と、気持ちよさそうに汗を流した。
稽古後は朝乃山、朝白龍と談笑した。朝乃山には「早く上に上がってきてくださいよ。自分が初めて勝った大関が朝乃山さん。対戦して楽しい相手って、なかなかいないから」と、横綱というよりも、1人の中堅力士として、敬意を持って接していた。よほど居心地がよかったのか、稽古後は高砂部屋でまげを結い、ちゃんこ場に顔を出して、つまみ食いと、若い衆らも交えて楽しそうに笑顔を振りまいた。
九州場所は1年最後の本場所となる。この1年を振り返って、しみじみと語る場面もあった。「休場も2回あったしなぁ。横綱として、すごく勉強になった1年かなと思います。ちょっとずつ慣れてきたけど、完全に慣れたわけじゃない。まだ横綱として優勝がないし、優勝目指して頑張りたい気持ちはある。何よりも、ケガしないことが1番」と、九州場所を見据えた。
また横綱という地位の難しさを問われると「横綱のプレッシャー。先場所は、しっかりやったけど、大の里横綱も当然、気合入れて、力を込めてくると思いますけど、僕も負けないようにしていかないと。その気持ちで」と、重圧を感じていたこと、大の里への対抗心を隠さずに話した。先場所は千秋楽の本割で大の里に勝って13勝2敗で追いついたが、優勝決定戦で敗れた。「あの一番は忘れていない。横綱として初の九州場所、今年最後の場所なので、いい成績で終わりたい。集中して、1日1番を大事にしていけば、結果はついてくると思います」。ガムシャラに稽古した高校時代を思い出し、駆け引きなしのまっすぐな思いを打ち明けていた。【高田文太】

