「野球のまち阿南をつくった男」(大学教育出版)という本が送られてきた。阿南市の前市長だった岩浅嘉仁氏が、野球で町おこしに着手し、市役所に「野球のまち推進課」を設置した。この前市長と私は新進党、自由党で国会活動を共にした同志。課長に任命したのは田上重之氏、この初代課長の奮闘記が5月末日に出版された。

地方再生・創生の教科書である。驚いたのは、田上氏は障がい者であり、野球ができなかったにもかかわらず、地域で草野球が盛んであるのに目をつけた点だ。野球で町づくりを発想し、市長に提案したところ、岩浅市長は快諾したという。そこから田上氏の闘いが始まった。バスケットボール、ハンドボール、剣道、合気道等で町おこしをする自治体はあるが、野球を前面に出して「課」まで設置するのは全国初。2010年、岩浅市長から直接耳にした。

大丈夫だろうかと心配したが、田上課長が頑張る。宿泊観光客ゼロの阿南市は、野球だけで年間宿泊客は5000人、日帰り客6000人で経済効果は約1億3000万円ナリ、大成功だ。しかも2019年のセンバツに地元の富岡西高が21世紀枠で甲子園に出場、「野球のまち」が盛り上がる。町が一体となり、阿南市が元気になる。「あななんアリーナ」という屋内練習場まで落成させた成果、はずみがつく。

大学や実業団チームが合宿に来るにとどまらず、生涯還暦野球大会や古希軟式野球大会、身体障がい者野球大会等を開催する。高校野球の聖地が甲子園なら、草野球の聖地が阿南球場と言われるまでになる。野球好きの人たち、有力チームの選手たちを観光客として経済効果を創出した阿南市、このアイデアに頭がさがる。国内には無数の野球チームがある。

地方を元気にしなければならない。町おこしのために野球を利用し、モンゴルや中国との国際交流にまで発展させている。地方自治体の独自性を発揮させ、おもしろい町を全国で作ってほしい。田上氏のような人材はいないのか。