新型コロナウイルスの感染拡大が日本を含め世界中で連日大きなニュースになっている中、2011年に公開された1本のハリウッド映画が今大きな注目を浴びています。

アメリカでも新型コロナウイルスの感染が確認され、米政府が緊急事態を宣言して中国に滞在したことがある外国人の入国を原則として禁止する措置を取るなど、感染拡大防止に全力を注いでいますが、マット・デイモンとジュード・ロウ主演のスリラー「コンテイジョン」が今回のケースと酷似していると話題になっているのです。世界中に恐怖を与えているウイルスがきっかけでiTunesでの再生回数が先月末から急上昇し、今週にはレンタルランキングでトップ10入りを果たしました。SNSでは世界保健機関(WHO)が緊急委員会を開いた先月23日頃から映画のタイトルが話題になり始め、興味を持った人たちが映画を見ようとしたものだと考えられます。

11年、「コンテイジョン」の来日会見を行ったスティーブン・ソダーバーグ監督
11年、「コンテイジョン」の来日会見を行ったスティーブン・ソダーバーグ監督

「オーシャンズ」シリーズやアカデミー賞監督賞を受賞した「トラフィック」(00年)などで知られるスティーブン・ソダーバーグ監督がメガホンを取った「コンテイジョン」は、新種のウイルスが香港で発生し、感染が瞬く間に世界中に拡大していくスリラーです。目に見えないウイルスの脅威に社会が混乱してパニックになる様は、まさに今回の新型コロナウイルスを彷彿させます。

グイネス・パルトロウ演じる女性が香港への出張旅行を終えて空港で電話をしている際に咳き込むところから物語は始まり、数日後に突然激しいけいれんを起こして意識不明となり、デイモン演じる夫が病院に連れていくも亡くなってしまいます。その頃、世界各国で同時に同じような症状で亡くなる人が急増していることが発覚し、ジュード・ロウ演じるジャーナリストがウイルス感染を疑い、真相を探るという内容です。

次々と増える犠牲者に世界中がパニックとなり、致死率100%の謎のウイルスへの恐怖や生き延びるために常軌を逸した行動を起こすなど人間の本性が垣間見えていきます。まさに、今現実の世界で起きているマスクの大量買い占めや高額転売なども、この映画で描かれている世界に共通するものを感じます。

もちろん映画で描かれている世界はフィクションですが、これから起こるかもしれないことを予見する、またそこから予防や対策を学び教訓にするといった意味合いを込めて改めて見直している人も多いようです。

映画のラストでは、どのようにしてパルトロウ演じる女性が感染源になったのか真相が明かされていますが、映画と同様に新型コロナウイルスもワクチンができて、感染源が特定される日が来ることを願うばかりです。【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)