新型コロナウィルスの感染拡大がアメリカで急速に広がる中、来月公開予定だった人気スパイ映画「007」シリーズ最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開が秋まで延期されることが決まるなど、ここハリウッドにも大きな影響が出ています。

そんな中、今度はテキサス州オースティンで13日から開催予定だった映画・音楽・テクノロジーの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」の中止も決まり、これから夏にかけて行われるイベントや映画の公開、プレミア上映会などにも多大な影響が出てくることが予想されます。

サンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジを通過するクルーズ船「グランドプリンセス」(AP)
サンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジを通過するクルーズ船「グランドプリンセス」(AP)

当初は予定通り開催するとしていたSXSWですが、ネットフリックスやアップル、アマゾンなど大手が参加の取り止めや、スターの登壇を中止することなどを決めたことを受けて急きょ中止を決断。また、4月25日にロサンゼルス(LA)で開催予定だった第48回AFI(アメリカ映画協会)の生涯功労賞を受賞した女優ジュリー・アンドリュースの授与式や、停泊中のクルーズ船内で感染拡大が発覚したサンフランシスコでも16日から予定されていた世界中のゲーム開発者が集う見本市「GDCサンフランシスコ」の延期が決まり、イベント開催を巡っては日本同様にここアメリカでも混乱が起きています。

トランプ米大統領も参加して先月ワシントン近郊で行われた政治集会に出席した参加者の1人に陽性反応が出たこともあり、今後は大勢の人が集まる大規模なイベント開催はさらなる慎重な対応が求められそうです。

そんな中、今後真っ先に影響を受けそうなのが、毎年大物アーティストが多数参加し、大勢のセレブも鑑賞に訪れることで知られるロサンゼルス近郊の砂漠地帯インディオで開催される音楽の祭典「コーチェラ」です。今年は4月10日から19日まで予定されていますが、現時点で延期や中止は決まっていないものの今後の状況次第では中止や延期の可能性も出てきそうです。さらに4月15日からはニューヨークでトライベッカ・フィルム・フェスティバルが、5月には南フランスで行われるカンヌ国際映画祭の開催も控えています。さらに夏まで混乱が続いた場合は7月に開催されるLAで北米最大のアニメのコンベンション「アニメ・エキスポ」やサンディエゴで行われる多くのハリウッドスターも出席することで知られる「コミコン・インターナショナル」などへの影響も考えられます。

感染が拡大する中国では映画の公開中止や延期が相次ぎ、すでに大きな損失を出しているハリウッドですが、トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル」やドウェイン・ジョンソン主演のネットフリックス映画「レッド・ノーティス」などイタリアで予定されていた撮影も延期や中止が決まるなど製作にも影響が出始めています。今後もしばらくは中国での新作映画公開やプレミア上映会などのイベント開催は不可能な状況であるだけでなく、アメリカ国内でも感染者がこのまま拡大すると本国でのプレミア上映会や映画の公開などにも影響が及ぶ可能性もあります。また、現時点でアメリカ国内のディズニーランドもユニバーサル・スタジオも通常通りオープンしていますが、フランス・パリのディズニーランドで10日に整備士の感染が発覚しており、今後の状況次第ではテーマパークが臨時休業する可能性もあります。ハリウッドもいよいよ、目に見えない敵を相手に戦々恐々となってきているようです。【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)