市川海老蔵(44)の「13代目市川團十郎白猿」襲名披露興行の時期を巡り、尾上菊五郎(79)が「今年、團十郎が誕生しそうだ」と発言した。

本来なら2020年5月から東京・歌舞伎座で始まる予定だったが、コロナ禍のため延期となり、いつ行われるかは未定の状態が続いていた。その中、今月8日にあった取材会に出席した菊五郎は、團十郎襲名について質問されると「本来ならとっくに襲名していたのに。でも、今年、團十郎が誕生しそうだ」と話した。松竹関係者は「未発表のこと。まだ何も決まっていません」と否定も肯定もしなかった。コロナ禍がこのまま収束するのか見通せない現状などもあり、松竹も襲名時期を簡単には公にできない事情もあるのだろう。

海老蔵が尊敬する祖父11代目團十郎も、その襲名時期を巡っては一転二転したという。

11代目が、将来の「團十郎」襲名含みで9代目團十郎の長女夫婦の養子となり、高麗蔵から海老蔵を襲名したのは1940年で、30歳の時だった。「花の海老さま」と呼ばれ大ブームを巻き起こしたけれど、実際に團十郎を襲名したのは22年後の1962年で、52歳になっていた。養父の市川三升が1956年に亡くなり、10代目團十郎を追贈した時には、「57年5・6月に襲名」とか「57年秋に襲名」などの臆測記事が飛び交った。そして、60年暮れに松竹幹部が演劇誌の取材に「61年の11月と12月の歌舞伎座で團十郎を襲名させる」と発言したが、実際に「11代目團十郎」が誕生したのは半年遅れの62年4月の歌舞伎座だった。しかし、11代目は65年に56歳の若さで亡くなり、「團十郎」でいたのはわずか4年だった。

当の海老蔵は5月の歌舞伎座第二部で「暫(しばらく)」に出演する。昨年の東京五輪開会式でも一部を披露したけれど、歌舞伎十八番の「暫」は邪気をはらう荒事の演目でもある。海老蔵は暗雲を一掃できるのだろうか。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)