アジア人を中心に多くの外国人が行き交い、日本屈指の多国籍街として独特の“文化”を形成している東京・新大久保&大久保エリアで最近目についたのが、この光映写宣伝。

「外国人不動産2F」の光文字が歩道に映写されくるくる回っていたから目立つ。この手法が普及したら歩道が“光のカオス”と化す可能性も
「外国人不動産2F」の光文字が歩道に映写されくるくる回っていたから目立つ。この手法が普及したら歩道が“光のカオス”と化す可能性も

歩道上に「外国人不動産2F (株)○○」という光の文字群がどこかから投影されて映写され、それがくるくる回っているから、歩行中、いやでも目に入ってくる。

いわば、物理的な看板を作らない「光の文字」による歩道上映写宣伝だろうが、この手の「光の文字」や「光で作った店のマーク」が歩道上を照らし、アニメのように動いて変化する宣伝手法は同エリアにおいては、別のアジア系料理店もやっていたから、広まり始めているのか、少し気になってはいた。

閑静な地域だったらかなり目立ってしまう宣伝手法だが、いろいろな国の言語の看板があちこちにあり、大久保通りにはネオンがギラギラ深夜まで輝き続け、ある種のアジア的“カオス感”も漂う新大久保&大久保エリアだと、そこまで違和感はない。

ただ、この「光の文字」を歩道に映写し、それを回転させたり、いろいろと動かせて目をひこうとする宣伝を多くの店がやり出したら、歩道はかなり異様な状況になるかもしれない。果たして普及するのかどうか。

大久保エリアでもう1つ目についたのが、とある新店の大きな店名看板。周辺では最近、ベトナム人の増加にともなってか、ベトナム料理店が次々オープンしているが、今年に入って大久保駅前の好立地にできた店の、大きなメイン看板の文字を見て「あれ?」と、しばらく立ち止まって眺めてしまった。

その看板の大きな文字は「ベトナム居酒屋 ○○」ではなく、堂々と「ベトナム酒居屋 ○○」(※○○の部分はカタカナの店名)となっていたのだ。建物の側面にあるもう1つの小さな看板では「ベトナム居酒屋」となっていたから、いったいこの店の名前、「酒居屋」と「居酒屋」どっちが正しいのか。

ちまちました常識を突き抜けたスケール感を放つ「誤字」に直面…はっきり言って心の底から笑顔になれた
ちまちました常識を突き抜けたスケール感を放つ「誤字」に直面…はっきり言って心の底から笑顔になれた

<1>「インパクトを出すためわざと『居』と『酒』をひっくり返してわざと『酒居屋』にした」のか、

<2>「単純な誤字で『酒居屋』と間違った文字の看板を設置してしまったがだれも気づかないまま」なのか、<3>「設置後に誤字と気づいたがそのままにしているだけ」なのか、

<4>「『酒居屋』という言葉は存在しているのだが、筆者が無知なだけ」なのか、

……これらのいずれかと推察されたが直接聞いてみようとさっそく、店に入って料理(ベトナム風牛肉焼きそば及びココナツジュースなど)を注文。

食べ終わった後、ころあいを見計らってベトナム人の女性店員に、入店直前に撮影した「酒居屋」看板画像を見せて、指で文字をさしたりジェスチャーも交えつつ、「店名看板の文字が『居酒屋』ではなくて、『酒居屋』になっているのですが…?」とやわらかく聞いてみた。

するとその女性店員、すぐ「そう、そう」と筆者の質問の意図を理解したようで、「ソレ、字をマチガエタ~!」といたずらっぽい表情で、明るく大笑いしたのだ。

別のベトナム人男性店員も「マチガエですよ~」とうれしそうに加わってきたから、筆者もつられて一緒に大笑いし、「この間違えはなかなか面白いですよ。個人的には今年最大級の面白い間違えですよ! 参りました!」とよく分からない称賛を告げると、その女性店員も「ネ、オモシロイでしょ!」と応じてきたから、日本人にはあまりない感じのノリの良さが、なんだか気持ちいい。

要は「誤字」だった。正解は<3>で、店側はすでに「誤字」と把握しているが、今のところそのままにしているだけのようだ。

とはいえ、ブログやツイッターの文字を間違えたというレベルではなく、新規オープンした店の、店名が表示されたメイン看板の文字を間違えていたわけだから、「誤字のスケール感」が尋常ではない。

ただ、そんな“重大ミス”を明るく笑い飛ばしてしまう店員たちの様子を見て正直、心が温まったのも事実。個人的には、こうした悪気のない「アジア的なアバウトさ」が大好きなのだが、何かとギスギスした世の中、この「酒居屋」看板からにじみ出た、ある種の“おおらかさ”に、何か忘れかけていたものを思い起こしたような気もした。

何はともあれベトナム風牛肉焼きそばがかなり美味しかったので、個人的には文句なし。

【文化社会部・Hデスク】