本業に加えて若手育成から連続ドラマ提供まで-現在のハリウッドで最も運動量の多い人と言っていいだろう。そのマイケル・ベイ監督が、手塩にかけたシリーズ第5弾に目いっぱいエネルギーを注力した。

 車に擬態して正邪の戦いを続けてきたトランスフォーマーが、実は太古からさまざまなものに姿を変えて歴史を動かしてきたという壮大な背景が織り込まれ、てんこ盛りのSF歴史絵巻になっている。

 日本の戦隊モノのようなタメを作るわけではなく、動きの中で変身していくスピード感ある映像や、金属のきしみと油圧をリアルに表現したすさまじい音響に改めて感服する。一方で、ベイ監督の持ち味は、遠近法をやや大げさに表現したならではの構図にある。

 地滑りに踏みとどまろうと手前に突き出された擬態ロボの巨大な足、あまりに小さな遠景…「富嶽(ふがく)三十六景」で富士山をのみ込む巨大な波を描いた葛飾北斎ばりの配置が映像の奥行きをグンと増す。

 出演者ではマーク・ウォールバーグの主人公に加え、ローラ・ハドック、イザベル・モナーのダブル・ヒロインがシリーズに新たな色合いを添えている。【相原斎】

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