全てを極める。テレビ東京の田中瞳アナウンサー(25)がニュースにバラエティーにと大活躍中だ。新人の頃から出演を続ける「モヤモヤさまぁ~ず2」(火曜午後11時6分)をはじめ、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」(月~木曜午後10時、金曜午後11時)ではフィールドキャスターとして奮闘。今、その目に何が映っているのか。仕事、私生活、思い描く未来。等身大の姿に迫った。

★「私の役割って」

入社4年目、25歳。取材準備を進めていると、166センチの体を少しかがめながら「よろしくお願いします」と田中アナが部屋に入ってきた。7月に日刊スポーツで仕事を始めたばかりの23歳カメラマンの前に立ち、レンズを見つめる。「最近、年下の子と仕事することも増えてきたんですよね」。優しく笑い、平均年齢24歳のセッションをそつなくこなした。

そんな自身が23歳になる頃、「モヤモヤさまぁ~ず2」の4代目アシスタントに就任した。約3年がたった今年、番組は15周年の節目を迎えた。

「番組が始まったのは私が11歳くらいの頃。長く愛される番組に携わらせていただいて本当にありがたいです。(会社に)『モヤさまが好きです』とずっと伝えていて、テレビで見るものだったのに、私がそこに参加することになって。最初はすごく混乱しました」

街歩き番組である「モヤさま」では、“散歩のプロ”を自称しているという、さまぁ~ずの三村マサカズ、大竹一樹と3人で各地をめぐる。出演当初は、アシスタント就任直前の新人研修で聞いた教えが迷いを生んでいたという。

「制作局での研修で『このアナウンサーを使いたい』と思う基準ってありますか、と質問したことがあって。『局アナは制作側の意図を唯一くみ取ってくれる出演者なので、そこをきちんとやってくれる人がいい』と言われたんですよね。最初はそこを考えちゃったんです。私の役割って今、何だろうとか瞬時に考えてしまうことがあったんですけど『モヤさま』は特殊で。3人出演者がいて『3分の1ずつ役割があってモヤさまだから』と言われて。さまぁ~ずさんとサブで私だと思っていたので、頭では認識しつつもなかなか3分の1の役割はできていませんでした。おふたりは、お笑い番組としてやっているので、そこの意識を私もきちんと共有して取り組まないといけないなと思っています。今は少しずつ素で臨めるようになってきて、最近は癒やしみたいになっていますね」

★怒濤の1週間

心の“モヤ”が晴れたのは、20年から看板ニュース番組「WBS」にキャスターとして加わったことも大きかった。入社当時から志望していたバラエティーと報道の両輪が実現。2番組に共通していたのは「初対面の人と会話をする」ということ。街歩きでは味わえない対話を繰り返す中で、磨きがかかった部分があった。

「用意してきた質問だけではなくて、その場で気になったことを質問してみるとか、そうしたことを(モヤさまで)街の人にも自然にできるようになってきました。(WBSで)取材に週3日行かせていただいていて、怒濤(どとう)の1週間が毎週続いている感じです。本当に恵まれた環境にいるなと思っています」

成長を続ける中で社内でも後輩を気に掛けるようになった。「モヤさま」にも出演経験のある2年目の冨田有紀アナや今年入社の中原みなみ、藤井由依アナには自身の経験を踏まえた上での助言を送っている。

「(先輩になった実感は)かなり湧いてきていますね。冨田アナは初めての女性の後輩アナウンサーで(出演した)番組をチェックして、できることをアドバイスしていました。気付いたらもう2人も入ってきて。何でしょうね。後輩がかわいくて(笑い)。結構、面倒を見ることは好きです。きっとこういう風に言われても『いや、何もわかってない』って思われちゃうだろうなとか、自分が新人だった頃の気持ちを思い出して、気付いたことは言ってあげるようにしています。私も新人の頃は、もっと言ってほしかったんですよ。こうした方がいいんじゃないかとか、この言葉遣いは良くないとか。なので、できるだけ言うようにしています。嫌がられてないといいんですけど(笑い)」

伸び盛りの時期に、早くも姉御肌が備わりつつある。今では年に数回放送される音楽特番「テレ東音楽祭」の進行や、「モヤさま」15周年記念のトークショーなど、単独で重要なポストを任されることも増えた。探求心は尽きない。

「今、報道でいろいろな場所に取材に行くことにすごく充実感を感じています。今後は自分で何かを企画して取材対象を決めて1つのものを放送するということに挑戦してみたいです。取材をして終わりではなくて、スタッフさんと常にやりとりをして、その前後にもきちんと携わって1つのものを制作する。今は配信コンテンツも充実しているので、ちょっとアナウンサーの枠を超えたものかもしれないですが、そういったことをやってみたい欲がありますね」

“プロ”には負けるが、自身も実は散歩好き。都内で生まれ育ったことから、時間がある時は自然に触れることを大事にしている。特に水場では泳ぐことも好きだが、眺めるだけでも息抜きになるという。

「ダムに行くのが結構好きで。一時期、電車で行けるところを探して毎週末行っていました。カメラも好きなので、ダムに行って景色を目に焼き付けて、写真にも撮る。すごく癒やされるんですよね。滝とか川沿いに行くのも好きで、自然の音に耳を傾けるというか。ずっとこの東京のど真ん中にいるので、自然をとにかく感じたいと思うんです。おすすめは奥多摩にある白丸ダムです。魚道という魚が通る道があるんですよ。コンクリートのらせん階段を下りて地下に行くんですけど、その仕組みとかも面白いなと感じています」

視界は良好。親しみやすい雰囲気の中に、周囲から「精神的に異常に落ち着いている」と評されたという胆力が光る。それでも、まだもうひと磨き。「このあとナレーションがあるんですよ」。取材を終えた田中アナは笑顔で一礼し、真っすぐなまなざしで仕事場へと戻った。【松尾幸之介】

▼さまぁ~ずの三村マサカズ(55)

まず顔がかわいい!(笑い)。待てるところ待てるし、プレッシャーを感じているんだろうなということを人に思わせないすごさがある。反骨精神もあり、何も知らず育ったお嬢さんじゃない。末恐ろしいです。間違えたりやらかすところを見てみたいけど、うまいことカバーできちゃうのかな。いろんな発注くると思うけど、モヤさまだけはやっていてほしいです。

▼さまぁ~ずの大竹一樹(54)

勘が良いです。お笑いもできるし、度胸やチャレンジ精神、遊び心もあります。変顔してブスになれる人です。でも僕らもいまだに知らないことが多いです。聞かないと自分のことを教えてくれないので。すでにもう我々のことはばかにしているでしょうね(笑い)。

◆田中瞳(たなか・ひとみ)

1996年(平8)9月16日、東京都板橋区出身。成城大社会イノベーション学部では心理学を学ぶ。大学2年時にミスコンテスト準グランプリ。学生時代からキャスターとして活躍し、雑誌の表紙なども飾る。19年テレビ東京入社。同期は森香澄、池谷実悠アナ。好きな食べ物は甘納豆、あんず、そば、グラタン。自身の思うチャームポイントは茶色い目。特技は3歳から始めた水泳で、バタフライが好き。愛称ひとみん。166センチ。血液型A。

◆モヤモヤさまぁ~ず2

さまぁ~ずとアシスタントのテレ東女性アナが毎週場所を変えて届ける街歩き番組。07年に放送した特別番組が好評となり、同年4月から深夜帯でレギュラー放送開始。アシスタントは初代が大江麻理子アナ、2代目は狩野恵里アナ、3代目は福田典子アナ。

 
 
インタビューを受けたテレビ東京・田中瞳アナウンサー(撮影・宮地輝)
インタビューを受けたテレビ東京・田中瞳アナウンサー(撮影・宮地輝)
優しい笑顔のテレビ東京田中瞳アナウンサー(撮影・宮地輝)
優しい笑顔のテレビ東京田中瞳アナウンサー(撮影・宮地輝)