月組次期トップに決まった珠城(たまき)りょうが、現トップ娘役の愛希(まなき)れいかをヒロインに迎え、全国ツアーに初主演している。メリメ原作「カルメン」をもとにした「ミュージカル『激情』-ホセとカルメン-」と「ショー『Apasionado(アパショナード)!!3』」。9月に退団する現トップ龍真咲の後任として、8年半でのスピード昇格が決まり、今年のテーマに「翔」の字を掲げた。4月9、10日に千葉・市川市文化会館など。

 「翔」。次期トップに決まった珠城は、初のツアー主演を目前に、今年の気持ちをこう表現した。

 「自分で歩き、はばたいて。後ろを振り返っている余裕はない。1センチでも前へ。新しいことに挑戦させていただいているので、今年は『翔』でいきたい」

 トップ娘役の愛希を相手役に迎え、全国を回る。

 「ツアーは月組だけではなく、宝塚歌劇の看板も背負って回る。とにかく、やるしかない。お客さまに見に来ていただけるだけの価値あるものにしないと」

 トップ龍は次作千秋楽の9月で退団。初ツアー開幕直前には、後任として珠城のトップ昇格が発表された。8年半でのトップ就任。スター制度導入以降では、天海祐希(6年半)に次ぐスピード出世。昨年、初めて羽を背負ったばかりだが、戸惑う暇はない。

 「龍さんはエネルギーがすごく、セリフや振りの覚えが早い。客観的に組のことも見ていらっしゃる。卒業される最後の瞬間まで学び、盛り上げていきたい」

 今ツアーで主演する芝居「激情」は、まじめな青年・ホセが、愛希演じる宿命の女に出会い翻弄(ほんろう)されていく様を描く。

 「けいこに入る前は(イメージで)頭でっかちでしたけど、今は役を作りすぎないように。まっすぐ純朴、ナチュラルに演じたい」

 月組育ちの珠城。愛希とは、新人公演時代にもコンビを組んだことがある。

 「繊細で心ある役者。彼女の存在は大きい。彼女から出てくるものを受け、待ちたい。特に前半は受け身。女役さんからアプローチされるって新鮮ですね」

 ショーでは一転して、スペイン語の題名の通り「熱く」はじけるつもりだ。

 「エネルギッシュに“熱さ”を出せたら。男役は年数がものをいう。背伸びしても自分の持っているものは変わらない。いい意味で割り切って、今の自分が出せるものを全部出して。舞台の上で自分をどれだけ解放できるかを突き詰めたい」

 一人前の基準とされる「男役10年」を前に、センターに立つことが決まり、覚悟もできた。「1年前を考えても、もっと力んでいた。男役とはこうあらねば、と意識しすぎていた」。考えすぎて、舞台を素直に楽しめない時期もあった。

 「単純にすごく楽しいって思える瞬間が多くなりました」と笑う。理想の男役像も幅が出てきた。

 「包容力とか情熱的とかいった言葉では表せないと思うようになった。自分にしか出せない色って絶対にある。私は『男役らしい男役』でありたい。そこが私の変わらぬベースです」

 恵まれた体格を生かした「男らしさ」が武器。色気、野性味も漂ってきた。

 「キザったり、“ザ・男役”みたいなラテンのノリが好き。その路線でいくなら、とことん『オラオラ』したいし、スーツならバシッとキメたい」

 男優では舞台出身の上川隆也や堤真一、生瀬勝久、阿部サダヲらの演技を参考にする。生え抜きの「月の御曹司」は、より高みへと羽ばたく。【村上久美子】

 ☆珠城(たまき)りょう 10月4日、愛知県生まれ。08年「ミー・アンド・マイ・ガール」で初舞台の94期生。月組に配属され、10年「スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。13年「月雲の皇子」でバウホール初主演。14年12月からダイキン工業の「うるさら7」のCMキャラクター。身長172センチ。愛称「りょう」「たまき」。