月組トップ鳳月杏が、兵庫・宝塚大劇場で、主演作「RYOFU」「水晶宮殿(クリスタルパレス)」で熱演を見せている。日本では“裏切り者”の印象が強い三国志最強の武将呂布を「楽しみながら」も、力強い立ち回りはもちろん、野心や愛憎といった内面を“宝塚らしく”描いている。宝塚公演は4月4日に開幕し、5月17日まで。東京宝塚劇場は6月6日~7月19日。

■「裏切りまくることを楽しみながら斬りまくる」

鳳月が三国志の世界を彩る。演じるのは最強の武将と名高い呂布。その勇猛さの裏で丁原、董卓と相次いで主君を殺害、身を寄せた劉備の領地を乗っ取るなど裏切りの人生のイメージがつきまとう。

いわば悪役。鳳月も「そうですね。私も呂布のイメージがそうだったから、結構心して臨んだ」と偽らざる思いを明かす。

男役としてさまざまな悪役も演じてきた。トップになったことで「なかなか主演で悪って設定がない。それがうれしかった。久しぶりに悪役ができる」と喜ぶ。前半では“ザ・呂布”のイメージ通りの場面も多く、「そういうところは裏切りまくることを楽しみながらやってますし、組のみんなを斬りまくっています(笑い)。楽しいというか、『あっ、呂布やってるな』という気がして高揚感みたいなものもあります」といたずらっぽく笑った。

殺陣の場面がふんだんに用意されており、「いつもの刀だけでなく方天画戟(ほうてんがげき)というやりを持っての立ち回りなので、今回はアクションの先生がド派手なアクションが得意。先生にいろいろなことを教えてもらいながら、強い立ち回りを見ていただきたい」。好評を博したミュージカル「侍タイムスリッパー」同様、見どころ十分だ。

■「いつもより共感していただける」呂布に

一方で、「お話の主軸なので、ひたすら悪というより、なぜそうなったかを書いていただいている」。作・演出を手がける栗田優香氏の手によって「意外にそこまでしっかり悪役じゃないなと思ってます。だから、皆さんのいつもの呂布のイメージよりも共感していただけるところはあるかと思います」。

■本場中国で作られた衣装も「目からも華やか」

中国統一を目指す戦いの物語の中に“宝塚らしい”ラブストーリーの要素を盛り込み、「恋愛、愛というものを呂布が知ったときの生き方というものが一番メインになるかな。権力争いの中でも、燃え上がる恋みたいなことがすごくキーワードかな」と呂布の違った一面を引き出している。

中国ものを演じたことは「記憶にない」というが、「中国ものって目からも華やかなところもある。そういう意味では、舞台もかなり色味の使い方が派手ですし、衣装も本場で作ってもらったものもあって、よろいも今まで見たことない色味だったりもする。重かったりはしますけど、見た目の美しさも大事にしたいから、着こなしやお化粧も研究していきたい」と、中国ものならではの華やかな魅力の表現にも余念がない。

■「ショーでマントにロングブーツ 踊るの初めて」

衣装で言えば、ショーの「水晶宮殿(クリスタルパレス)」も負けてはいない。鳳月演じるメテオという騎士が宝石を集める。呂布を炎とするなら、こちらは氷。正反対のコスチュームだが「お衣装がとにかく大きいし、ショーでマントってあまりないですよね。マントにロングブーツみたいな感じのコスチュームをショーですることはないから、そういう意味では初めて。こんなものを着て踊るのは初めてっていうことがたくさんある。皆さまもこういうビジュアルは見たことがないということがあると思うので楽しみにしてください」。

両作で相手役を務めるのがトップ娘役の天紫珠李。24年7月にトップコンビとして同時就任したが「就任当初は一緒に頑張っていくというか、組の先頭を走っていく上で、彼女が一緒に同じタイミングで就任したこともあって心強く、一人じゃないなという感覚でできることに感謝している」と言う。

就任から1年以上が過ぎ、お互いにトップとしての経験を積み、「よりよいものに率先して組の皆さんの前に立ってチャレンジしていくということを一緒にやっていこうと常に2人の目標にしている。今は、信用しているので、彼女なりにチャレンジしていってほしい。相手役だけど、1人の組子と演者として応援している」と信頼を寄せた。【阪口孝志】

◆RYOFU 作・演出は栗田優香氏。中国并州(へいしゅう)を治める丁原の娘雪蓮を誘惑し、娘婿として并州の地と兵力を手に入れ、天下取りをもくろむ三国志最強の武将呂布奉先と、中国4大美人のひとりである貂蝉(ちょうせん)との因果な愛憎を描く、血と愛と罪が華やかに燃え上がるピカレスクロマン。

◆水晶宮殿(クリスタルパレス) 作・演出は齋藤吉正氏。水晶で築かれた中世の宮殿をほうふつとさせるクリスタルパレス。流星の騎士メテオが、宇宙空間に散ったクリスタルパレス再興のため、複数の水晶(クリスタル)を探し求める伝説のプリンセスとともに星々を巡る旅に出る。月組の魅力を注ぎ込んだゴージャスでスペクタクルなファンタジーショー。

◆鳳月杏(ほうづき・あん)6月20日、千葉・船橋市生まれ。06年入団。月組配属。月組、花組、月組と経験し、歌、ダンス、芝居すべてを磨き、3拍子そろったスターに成長。24年7月、月城かなとの後任として、トップ制度固定後では最も遅咲きの19年目でトップに就任した。全国ツアー「琥珀色の雨にぬれて」「Grande TAKARAZUKA 110!」で天紫珠李とのトップコンビお披露目。身長172センチ。愛称「ちなつ」。

「RYOFU」「水晶宮殿(クリスタルパレス)」出演中の鳳月杏
「RYOFU」「水晶宮殿(クリスタルパレス)」出演中の鳳月杏
「RYOFU」「水晶宮殿(クリスタルパレス)」出演中の鳳月杏
「RYOFU」「水晶宮殿(クリスタルパレス)」出演中の鳳月杏
呂布を演じる鳳月杏(撮影・和賀正仁)
呂布を演じる鳳月杏(撮影・和賀正仁)