役所広司(61)が15年ぶりに連続ドラマに主演した、TBS系日曜劇場「陸王」(日曜午後9時)が22日、舞台となった埼玉県行田市でクランクアップした。

 最低気温が氷点下1・9度と冷え込む平日の朝、こはぜ屋の面々らが豊橋国際マラソンを応援する、24日放送の最終回の核となる場面の撮影に3000人を超えるエキストラが集結。役所は撮影を終えると「社長の役所広司です。本当にたくさんのエネルギー、ご協力をいただき、ありがとうございました」と万感の思いを口にした。

 真っ青な空の下、紅白の手旗が振られる中で、市川右団次(54)、阿川佐和子(64)、吉谷彩子(26)らが涙を流しながら抱き合った。福沢克雄監督(53)がOKを出した午後12時41分、9月2日から始まった3カ月半余りの撮影が終了した。スタッフ、エキストラが歓声を上げる中、俳優陣は涙をぬぐいながら顔をくしゃくしゃにして笑い、また涙し、行田市の市民に感謝した。

 歓喜に湧く中、クランクアップの56時間19分後には最終回の放送が迫っていた。福沢監督はエキストラに演出する中で「明後日、放送なのに、まだ撮っている…普通、こんなことはございません」と苦笑しつつ、現状を漏らした。全10話だが、1話が54分、2、3話が15分、5話が30分、9話と最終回の10話が25分、それぞれ放送時間が拡大しており、同監督は「(1話)1時間に換算すると、14本分撮っています」とも語った。

 関係者によると9、10話は撮影と編集、放送がほぼ並行する状況となり、福沢監督と田中健太監督との2頭体制で、それぞれ別班を率いて撮影するスクランブル体制を敷いたほど、スケジュールがタイトになったという。風間俊介(34)が「まだまだ仕上げの作業が残っていると思いますけど、スタッフの皆様、お疲れさまです」と口にしたように、福沢監督をはじめ制作陣には編集作業が待っていた。複数の関係者は「編集は、24日の夕方くらいまでかかる可能性があります」と口をそろえた。

 それほど差し迫りながら、現場には笑顔が絶えなかった。その雰囲気をつくりだしたのは“ジャイさん”こと福沢監督だった。主要キャスト11人、その他のキャスト、3000人超のエキストラが集まり、3台のカメラを駆使する映画レベルの大きな撮影現場の、全てに細やかな気配り、心配りを続けた。

 エキストラに演出する際は役どころの性格、背景なども織り交ぜて分かりやすく、撮影中のこぼれ話なども面白く盛り込んで語った。そのトークは、歌手のライブでのMCさながらだった。俳優陣には短い言葉で端的に指示を送り、現場のスタッフにはあだ名をつけていじりつつも、指示の意図が伝わらない場合は、厳しい言葉も投げかけた。そうした福沢監督の1つ、1つの言葉が全体に行き渡り、後方や端でカメラに映るかどうかのエキストラまで旗を振り、声を上げ、跳び上がって応援のシーンを演じた。撮影を終える頃には、全員が心1つに“チーム陸王”になっていた。

 涙、涙のクランクアップの中、座長の役所の目に涙はなかった。「行田の皆さん、本当にありがとうございました。福沢監督に、ずっとここ何カ月間か励ましていただいて。本当にしごいていただいて、ありがとうございます。キャストの皆さんからもたくさん力をいただいて、おかげさまで、今日の日を迎えることが出来ました。福沢チームのすばらしいスタッフには本当に助けて、支えていただいた。とにかく今は最終回…ぜひ、見てください」。晴れやかな笑顔に“チーム陸王”で走り抜いた、3カ月の充実感があふれた。【村上幸将】