浅利慶太プロデュース公演「ミュージカル 李香蘭」(22日まで)が10日、東京・自由劇場で初日を迎えた。日中戦争の中、中国で一世を風靡(ふうび)した歌姫李香蘭として生きた山口淑子さんの半生を描いた作品で、1991年の初演以来、上演を重ねてきた。

 演出の浅利氏は「『李香蘭』は昭和の歴史の本質を描いた作品。今のお客様に理解していただけるように丁寧に作っています。役者たちは気分や感情ではなく、時代を実感して生きること、どんな苦しみや怒り、悲しみがあったのかを実感してやってくれています。それをご覧になって、きっとお客様も、あの時代がどうだったのかリアルに感じていただけると思います。この芝居を見て『二度と戦争は起こしてはいけない』と思っていただきたい」。

 初演以来、李香蘭を演じている野村玲子も「李香蘭は毎回『これが最後』と思って作品と向かい合っていますが、こうしてまた李香蘭を生きることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。演出家の『李香蘭は、昭和の戦争というタペストリーが織り上げられる中で出来上がっていった、赤くてきれいな一本の線』という言葉が、私の役作りの原点になっています。今回は新しいメンバーも多く、ゼロからそのタペストリーを一緒に作り上げてきました。山口(淑子)先生は、後に平和のための活動をされるようになりました。カンパニー一同その思いを受け継ぎ、祈りを込めて、お客さまにお届けいたします」と話している。