平成最後の5月がやって来た。来年の今頃は平成じゃないと思うと、ちょっと感慨深くなる。

 毎週水曜日に中面見開きで展開している五輪(オリンピック)面のリレー連載で、テレビ朝日の進藤潤耶アナウンサー(41)をインタビューをした。東京五輪までに6年間かけて計300人の話を聞くという壮大な連載だ。ご登場いただく方には、次に受け継ぐリレーということで、赤いバトンを持って写真を撮らせてもらっている。

 ところが、久しぶりの五輪面インタビューとあって、記者はバトンを忘れてしまった。取材に立ちあってくれたテレビ朝日の宣伝部の方に「バトンを持って撮影ですよね」と言われて、初めて失念していたことに気が付いた。根っからのポジティブシンキングなので「じゃ、バトンを受け取るように腕を前へ突き出してください」とポーズを作ってもらって撮影。会社に帰ってきた。

 夕方に社で「バトン、忘れちゃってさ。まいったよ」と軽い調子で話すと、相手の顔が見る見る青ざめた。唇を震わせながら「い、い、今まで、バトンを持たずに登場した人はいませんよ。すぐに撮り直してきたください」と命令された。そんなバカなことはない、と過去の紙面を検索すると、全てちゃんとバトンを持って写っている。

 が、実は進藤アナは、取材の翌日にヨルダンに出発するスケジュールだった。なでしこジャパンがW杯出場をかけて戦った、サッカー女子アジア杯の取材、実況だ。

 (困った。写真を合成するわけにもいかない。)

 と、その時、わが文化社会部の前を、スポーツ部のなでしこジャパン担当記者が通りかかった。聞けば、翌日にヨルダンへと旅立つという。「すまんがヨルダンへの荷物に、バトンを1本加えてくれんか」と、土下座せんばかりに目に涙をためて頼むと快諾。ヨルダンの地で、進藤アナのすてきなバトン写真を撮って無事に掲載された。なでしこジャパンも、見事優勝でW杯出場決定に花を添えた。

 で、進藤アナのインタビューだが、行数が限られていて書ききれなかったことがある。平昌(ピョンチャン)五輪で女子カーリングの銅メダル獲得を実況した進藤アナは、相手の勝ちを認める「コンシード」という用語を定着させるために、バンクーバー五輪から10年近い努力を続けてきたという。「ギブアップ」という、誰でも分かりやすい言葉があるが、競技の本質を伝えるために、コンシードという言葉にさまざまな分かりやすい形容詞を付けて、伝道師のように伝えてきた。

 そしてインタビュー。進藤アナが初めて五輪取材に行ったのが、8年前のバンクーバー五輪。女子フィギュアのインタビュー担当で、競技を終えた直後の浅田真央にマイクを向けた。惜しくも銀メダルに終わった浅田は、インタビュー中に涙をあふれさせた。

 インタビュアーの進藤アナにミスはなかった。だが「もうちょっと違う、聞き方、引き出し方があったなと今でも思います。今でも、よく映像が流れるので見る度に胸が痛みます」と振り返った。

 五輪の競技直後のインタビューは、全身全霊をかけて戦ったばかりのアスリートにマイクを向けるのだから大変だ。テレビのスポーツ実況中継、スポーツ紙の芸能面と“土俵”は違うが、大変勉強になった。平成の最後を締めくくるべく、気合を入れ直して頑張ろうと思わせてくれた取材だった。