俳優小栗旬(35)が、伝説の小説家太宰治(享年38)を演じることが2日、分かった。蜷川実花監督(46)が、太宰の遺作「人間失格」をタイトルとする映画に「この役をできるのは絶対に小栗旬しかいない」と、ラブコールを送って決まった。撮影は、11月上旬からスタートさせた。公開は来年の予定だ。

「クローズ」から「銀魂」シリーズまで、10年以上もヒット作を生み続けてきた銀幕のスター小栗。今回は、昭和の文学界の異才にして、愛と薬物に溺れて自殺未遂を繰り返し、最期は愛人と入水自殺。史上最もスキャンダラスだった小説家を演じる。

「お話をいただいたのはずいぶん前。悩みました」。小栗は、強烈な印象が根付く文豪を「自分を通して生み出すことができるのか。自分がこの人生を生きることができるのだろうか」と、長らく葛藤したという。撮影に入った今は「ただただ、最高の孤独とは一体どこに存在しているのか。手に入るものなのか。そんなことを日々感じながら、1歩1歩太宰に寄り添いながら過ごしております」。

蜷川監督も「スターである彼にしか見ることのできない景色、トップを走り続けているからこそ抱える孤独。誰もまだ見たことのない小栗旬。連日の撮影で鳥肌が立つことが何度も」と話す。「これをやるための今までの人生だねと、2人で話しています」とも明かした。スキャンダラスな映画を作り続けるニナミカと、当代一の華やかさとアバンギャルドさを併せ持つ小栗の、邦画における集大成。今作は同名の小説の映画化ではなく、太宰の人生と「人間失格」の誕生秘話を描いた物語になる。

小栗は今後、20年公開予定の米国映画「ゴジラVSコング(仮題)」で、ハリウッドに初進出する。世界へ羽ばたく前に、多くの日本人が魂をえぐられた闇へと没入する。人生最大の傑作にするべく、今の自分を注ぎ切る。【瀬津真也】