ロック歌手内田裕也(79)が、沢田研二(70)ら当時のタイガーズのメンバーに見送られ、羽田空港から渡英したのは67年のことだ。

内田は3年前のインタビューで「ベストタイミングだった。早くても遅くても感じ方はまったく違ったと思う」と振り返った。

「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれた時代。ビートルズ、ローリング・ストーンズ…そしてモデルのツィッギー。英国は若者文化の最先端を走っていた。内田の文字通りスウィンギングな生き方の根幹がここにあったと言っても過言ではないかもしれない。

その前年には内田が前座を務めたビートルズの日本公演があり、渡英したその年にはツィッギーが来日している。私自身、当時小学校高学年だったので、実は64年の東京オリンピック(五輪)より「スウィンギング・ロンドン」の高揚の方が記憶は鮮明だ。

あの時代を思い出させるドキュメンタリー映画2本が立て続けに公開される。

1本は28日公開の「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」(ローナ・タッカー監督)。矢沢あい作の人気コミック「NANA(ナナ)」にも登場するファッション・ブランドにそのまま名前を冠したデザイナーは現在77歳。

30代の頃にセックス・ピストルズのプロデューサーとしてパンク・ムーブメントを巻き起こしたことでも知られるが、そもそも彼女が青春時代を過ごし、その後の生き方を決定付けられたのが60年代後半のロンドンだったのだ。

パンク・ファッションは若者の圧倒的な支持を受けたが、一方で英国の伝統的な生地や柄も大切にし、環境保護や人権保護問題の活動家としても知られている。圧倒的なバイタリティーの根底に若き日のロンドンの高揚があったことが分かってくる。

当時の様子を直接的に伝えるのが来年1月5日公開の「マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!」(ディヴィット・バッティ監督)だ。

時代のただ中で俳優として地歩を固めたマイケル・ケイン(85)がナビゲーター。当時のニュース映像満載でダイレクトに高揚感が伝わってくる。

年配者にはなつかしく、若い人にはあふれるようなエネルギーが新鮮に感じられるかもしれない。