「第32回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が、11日までに決まった。

石原裕次郎賞は戦艦大和の建造秘話を題材にした「アルキメデスの大戦」に決まった。山崎貴監督(55)にとっては「ALWAYS 三丁目の夕日」以来14年ぶり2度目の受賞。

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ヒット請負人のイメージの強い山崎監督だが、今回は自ら「撮りたい」と動いた。

「日本人を語る上で、ゼロ戦と大和だけはその象徴としてどうしても撮りたかった。映画を作る上の一種のスターじゃないですか。5年前に『永遠の0』が撮れたので、後は大和でした。でも、大和はある意味語り尽くされた題材です。新たな視点は無いものか。行き当たったのが今回の原作だったんです」

三田紀房氏の原作コミックは、元研究者の異色の将校が数学的見地から大和建造に異を唱えるユニークな作品だ。

「今までにない大和の映画になると思いましたが、戦闘シーンは無い。だから会議をいかにドラマチックに撮るかがエンタメとして成立するかのカギでした」

主演の菅田将暉(26)は複雑な数式を頭に入れ、板書しながら早口の長ぜりふを劇中3回にわたって披露した。

「DVD発売があって、久しぶりにメーキング映像を見たんですけど、最後までちゃんと行くと分かっていながらハラハラしましたね。専門家の人に検証してもらったホンモノの数式なんですけど、よくぞやってくれたと改めて思います。ま、負荷をかければかけるほど燃える男ですからね」

上官の山本五十六を舘ひろし(69)が好演した。

「これまでの作品では聖人化されてきたけど、舘さんは素晴らしく人間的に演じてくれました」

ゼロ戦、大和とヒット作を重ね、満足感もある。

「合理的な米国の兵器と違い、日本のそれは愚かしくも美しい。よくもあしくもそこに日本人らしさがあったと思います。その辺は出せたかと」とほっとした表情になった。【相原斎】

◆石原裕次郎賞 戦後を代表する映画スター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、石原プロモーションの全面協力で日刊スポーツ映画大賞に併設。興行的にヒットした作品や完成度が高く大作感のある娯楽作に贈られる。賞金300万円。

◆山崎貴(やまざき・たかし)1964年(昭39)6月12日、長野生まれ。CGによる映像表現VFXの第一人者。00年「ジュブナイル」でデビュー。05年「ALWAYS 三丁目の夕日」で映画各賞に輝く。13年「永遠の0」は邦画年間興収1位を記録。他に14年「STAND BY ME ドラえもん」(14年)などの作品がある。

◆アルキメデスの大戦 1933年(昭8)、海軍省は世界最大の戦艦の建造計画を進めていた。国家予算に打撃を与える巨大戦艦の建造に反対する山本五十六(舘ひろし)は、数学者の櫂直(菅田将暉)に建造にかかる見積もりを算出させようとする。

▽石原裕次郎賞・選考経過 「アルキメデスの大戦」について「新しい形の戦争映画のあり方」(寺脇研氏)や、東宝が戦争をテーマに作品を作ってきた歴史に触れ「東宝の8・15作品、リニューアルしながら続けてほしい」(石飛氏)の声が。「キングダム」「天気の子」が対抗馬になり、2回の投票で決まった。