新型コロナウイルスの感染拡大を受けて自粛が続く中、テレビ番組も過去のドラマを再編集した特別版や、スポーツの名勝負などが相次いでいる。その中“真打ち”が登場する。TBSは12日、16年10月から12月に放送し、社会現象的な人気を巻き起こした連続ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(「逃げ恥」)を再編集した「-ムズキュン! 特別編」を、19日午後10時から放送すると発表した。

「逃げ恥」は、漫画家海野つなみさん原作の同名漫画のドラマ化作品。大学院を卒業したものの就職の機会を逸し、彼氏もいない森山みくりが、35年間恋愛経験のない“プロの独身”津崎平匡の家で家事代行業をする中で契約結婚する。そんな2人の間に恋愛感情は生まれるのかを描いた、社会派ラブコメディー。主人公みくりを新垣結衣、平匡を星野源が演じた。星野が歌う主題歌「恋」に合わせて新垣らキャストが踊る、エンディングの“恋ダンス”も人気を呼び、視聴率は初回の10・2%から最終回は20・8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)まで伸びた。19年12月28日と同29日には、ディレクターズカット版が全話一挙放送された。

原作は、12年11月9日発売の月刊漫画誌「Kiss」(講談社)22号で連載がスタートし、TBSでドラマの最終回が放送されてから4日後の16年12月24日発売の同誌で連載を終えた。そして翌17年2月25日発売の同誌に番外編が掲載された。記者は、掲載前の17年1月に海野さんに取材を依頼し、メールでの取材が実現した。

海野さんは作品について「多様性を大事にする時代においての、皆さんの入り口の1つになっていたらいいなと思います。誰もが『そうあるべき』に縛られない、そして誰かを故意に傷つけない、そんな時代になっていって欲しい」と語った。時代に向き合った社会性の高い作品性は、ドラマにもしっかり反映された。

ドラマについては「脚本の野木亜紀子さんが、とてもうまく原作をリミックスされていて、セリフやエピソードの組み替えで話をうまくまとめられていたり、演出で原作の肯定的なセリフが否定的になっていたりとか、驚きながらとても面白いなあと思って見ていました」と感想を語った。

キャスティングについても「新垣結衣さんのかわいさと清潔感、星野源さんのかわいさと童貞感(笑い)他のキャストの皆さんも、微妙に原作とは違うところもありましたが、ドラマとして見ると、とてもマッチしていて素晴らしかったと思います。キャスティングだけで、ドラマは成功だと思いました」と絶賛した。

海野さんは、みくりの伯母・土屋百合を主人公に描いた番外編の先の、続編執筆の可能性について、当時「今は続きは考えていないです(あれば連載を続けているでしょうし)。描く可能性があるとすれば、2人の行く末を考えて『これは物語になる』と思える何かが自分の中でつかめたら、でしょうか」と答えていた。その後、19年1月25日発売の「Kiss」で連載を再開。結婚して2年半になったみくりと平匡が、共働きする中で子供を授かり、出産するまでの1年を描いた。少子化や男女それぞれが抱える生きづらさなど、再び「今」という時代に向き合った作品となった。

今回の「-ムズキュン! 特別編」は、連ドラを再編集し、未公開シーンやカットを新たに加えたというが…あえて言いたい。

「『逃げ恥』の新作を見たい」

「逃げ恥」の放送終了当時、新垣は28歳、星野は35歳だった。それから3年5カ月。31歳になった新垣がみくりを、39歳になった星野が平匡を、どう演じるかに興味がある。原稿の最後に、17年1月の海野さんの言葉を紹介したい。

「作者というのは欲張りなので、いろいろな形で展開してくださるなら、いろいろ見てみたいなあと思います。もちろん、神キャストのTBS版の続きも見てみたいですし、いろんな局で違うキャストで毎年やってもらってもいいです」

TBSさん、ご検討、よろしくお願いします。【村上幸将】