吉田拓郎や大滝詠一さんらを輩出した伝説のエレックレコードが手掛ける、4人組インディーズバンドMOTOR HOTELがブレークの兆しを見せている。自主イベントやユーチューブなど、音楽活動を地道に続けてきた。同社は「令和のシュガーベイブにしたい」と意気込んでいる。

 

エレックレコードは、拓郎や泉谷しげる、大滝さんのパーソナルレーベルだった「ナイアガラ・レーベル」などを手がけ、70年代のインディーズシーンを切り開いてきたが、業務の衰退から76年に倒産した。

しかし、同社の功績は当時のURCレコードやベルウッド・レコードと並び、伝説のレコード会社として懐かしむ声も多い。04年に当時の社員や関係者によって新生・エレックレコードとして再スタート。かつて同社が発売するなどで所有してきた音源を使っての復刻盤などを発売してきた。一方、09年には35年ぶりに「エレック唄の市2009」を開催するなど、インディーズ系アーティストを支援してきた。

「エレックレコードとして独自のアーティストを育てたい」と、18年から手掛けてきたのが4ボーカル、2ギターの音楽制作チームとして結成されたのがMOTOR HOTELだ。

デビューから2年。昨秋、配信発売した全6曲入りファーストシングル「FLAG」の収録曲「FLAG feat.chihiRo-Decoy」が、アップル・ミュージックの新チャート「Shazam ディスカバリーTop50」で1位にランクイン。FM TOKYOの全国38局のネットワークJFNは「21年のブレイクアーティストの大本命」として強力にプッシュしている。

さらに「FLAG」の収録曲「Exotic Tokyo」が、内藤剛志が主演するテレビ東京系金曜ドラマ「警視庁強行犯係 樋口顕」の主題歌に抜てきされた。同局の山鹿達也プロデューサーは「都会的で印象的な作品。刑事の仕事に対する思いを、爽やかで力強いボーカルとサウンドで、ドラマのオープニングテーマとしてワクワクさせてくれる」と絶賛している。

エレックレコードの関係者は「想像以上の反響です。これまでは復刻版や既成のアーティストの作品をリリースしてくるだけでしたが、再スタートから17年、MOTOR HOTELの活躍で、ようやく今年はメジャーの仲間入りを果たせるかもしれません」。さらに「彼らの音楽は4人の個性を前面に出した作品であることが大きなポイント。世界を旅する中で出会った人や音楽にインスパイアを受け、そのエッセンスを取り込んだ、いわゆる“トラベルポップミュージック”になっている。とにかく聴いたら旅に出たくなるような感じを抱かせてくれる。我々としては“令和のシュガーベイブ”を目指し、年配層から若い層まで幅広い世代にアピールしていきたいし、エレックレコードらしいレーベルカラーを作り上げていきたい」と話している。

 

◆MOTOR HOTEL ザキ、トコ、エディ、セイジの4ボーカル、2ギター。17年に静岡県三島市で結成。グループ名は「旅のオアシス」を意味する。18年にエレックレコードからシングル「LIFE IS JOURNEY」でデビュー。

 

◆エレックレコード 69年に設立。70年には吉田拓郎をスカウトし「イメージの詩/マークII」「人間なんて」などを発売、その後も泉谷しげる、佐藤公彦、古井戸、海援隊、丸山圭子、まりちゃんズなどをデビューさせた。最盛期には100人を超える社員がいた。75年には大瀧詠一さんのプライベートレーベル「ナイアガラ・レーベル」と契約、シュガー・ベイブなどをデビューさせたが、事業の衰退などで76年に倒産。04年に有志により新生・エレックレコードとして新発足。