俳優井之脇海(26)が主演する舞台「エレファント・ソング」が4日、東京・渋谷のパルコ劇場で初日を迎えた。

井之脇にとって3年ぶりの舞台で、初主演となる3人芝居。開演前に共演の寺脇康文(60)ほりすみこ(53)、演出の宮田慶子氏とともに会見して、思いを語った。

03年にカナダ・モントリオールで初演された舞台で、14年にはグザヴィエ・ドランが主演して映画化された。精神科に入院する青年マイケル(井之脇)が、失踪した医師を探す院長(寺脇)と看護師(ほり)を相手に、虚実判然としない話をして翻弄(ほんろう)する会話劇。

放送中のNHKテレビ小説「ちむどんどん」などテレビ、映画で活躍する井之脇にとって、19年の「CITY」以来3年ぶりの舞台が初主演となった。「映像の仕事が多いのですが、深く舞台にチャレンジしたいと思っています。しかも主役。自分が成長するのに必要なものだと思っているので、全力でチャレンジします。昨日まではドキドキしていましたが、今日はワクワクしています。マイケルとして精いっぱい生きていきたい」と話した。

寺脇は「もう1人の“脇”です(笑い)。3人しか出ないし、アクションや群舞があるわけでもない。女優をバックハグすることも、キスシーンもあるわけでもない。でも、台本を読んだら面白くて、すぐやりたいと思いました。それで、稽古に入って恐ろしい作品に入ってしまったと思いました」と笑った。

演劇ユニット「なゆた屋」を主宰する、ほりは「3人芝居で、この人誰だと思われているかもしれませんが、小劇場で芝居をやって来ました。2人が出ずっぱりのところに出たり入ったりします」と話した。

宮田氏は「3人だけの出演で、精神科の先生の診療室が舞台。濃密な言葉で、現代の人たちが抱いている悩み、フラストレーションが1つずつ解き明かされていく。それぞれが台本にないバックグラウンドをいっぱい抱えています。悩みながら、たくさん話しながら、ここまで来られました」と振り返った。

1カ月におよぶ稽古を振り返って、井之脇は「おのおのが集中して考える。それにプラスして、みんながマイケルのことを考えてアドバイスをくれました。1人で抱え込み過ぎなくてよかった。初主演で、これだけ濃密な芝居をやることになると思いませんでした。マイケルは自分を『なんなんだろう』と思っているけど、僕自身も『演じるってなんなんだろう』って考えた1カ月で、リンクするものがありました。それを本番中にたくさん見つけて行けたらいいと思う」。

寺脇は「ありとあらゆる楽しい苦労を、1カ月味わいました。何度も壁にぶつかりました。間違いなく、今までやってきたものと違うものだと思う。(岸谷五朗と主宰する演劇ユニット)『地球ゴージャス』とか大ざっぱだったり、面白かったり、ちょこまかしたものとは違う(笑い)。舞台ではあるけど、リアルな映像芝居のような感じもする」と話した。

映像と違う舞台の楽しさについて、井之脇は「同じせりふを毎日深めていく。コンディションによって反応も違う。お芝居を追求して行くのは勉強になるので、ぜひ今後も出来たら。一応座長だし、恥ずかしい姿は見せられない」。寺脇は「新鮮だね。僕も還暦を迎えたけど、20代の感性を思い出して頑張る」と話した。

22日まで。25日に愛知公演、28日に大阪公演。