山下敦弘監督(45)と宮藤官九郎(51)が、監督と脚本家として初めてタッグを組み、第57回台湾アカデミー賞(金馬奨)で最多5冠に輝いた台湾映画「1秒先の彼女」の日本版リメークを製作することが決まった。9日、配給のビターズ・エンドが発表した。

公開は23年予定で、同監督にとって18年「ハード・コア」以来、5年ぶりの長編映画となる。また、宮藤が既存の映画の、リメークの脚本を手がけるのは初めて。

「1秒先の彼女」は、愛すべきはみ出し者たちをユーモアと優しさあふれるまなざしで描いてきたチェン・ユーシュン監督が、20年前から温めていた脚本を基に撮りあげた作品。何をするにも人よりワンテンポ早い彼女と、遅い彼の消えた“1日”をめぐるラブストーリーを、オリジナリティーあふれるアイデアと巧みなストーリー展開で描き、金馬奨で作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞を受賞した。

山下監督は「『1秒先の彼女』を見て主人公のシャオチーを演じるリー・ペイユーのファンになり、リメークに名乗りを上げさせていただきました」と自ら希望してのリメークだと語った。一方で「が、しかしチェン・ユーシュン監督の唯一無二なその世界観、“時間にまつわるファンタジーラブロマンス”と書いてしまえば簡単に聞こえますが、映画全体にユーシュン監督のエッセンスというか“魔法”みたいなものがふりかけられていて、そう簡単にリメークさせてはくれない作品を前に思考が停止してしまい、一体どうやってリメークすればいいのか全く分からなくなってしまいました」と苦悩もあったと振り返った。

その苦悩を取り払うことが出来たのが、宮藤の存在だったという。「と、その時、脚本家・宮藤官九郎という救世主が現れ、自分たちなりの“魔法”のかかった新たな作品として作る意味と楽しさを授けてくれました」。宮藤は、山下監督が手掛けた16年の映画「ぼくのおじさん」や、20年1月期のテレビ東京系連続ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」に俳優として出演しており「宮藤さんとは俳優としてご一緒させていただいたことはありましたが、監督と脚本家という立場は初めてで、どう接すればいいのか分からずにいましたが、今は完全に甘えています」と、最初は戸惑いがあったとしつつも、固い信頼関係をのぞかせた。そして「自分としては5年ぶりの長編映画なので、初作品を作る新人監督のつもりで臨みたいと思っています」と意気込んだ。

宮藤は「山下さんの作品に呼んで頂いたり、山下さんが僕の作品に出てくださったりしましたが、いよいよ監督と脚本家という、シャレにならない形で関わることになりました。感無量です」と、山下監督と脚本家として初タッグを組んでの感慨を口にした。その上で「既存の作品のリメークは初めての経験でしたが、オリジナルのファニーで、かわいらしい印象は残しつつ、せっかく山下監督が撮るんだからと欲張って人生の苦み、もどかしさ、おかしみなどのエッセンスを盛り込み、われながらいいあんばいに変換できたと思います。何しろ監督も僕も、台湾版の結末に心をつかまれ、あの読後感を大事にしようという一点では一致していたので、途中、寄り道しますが、ゴールは一緒のはず。楽しみです」と語った。

リメーク版は舞台を日本に移す。メインキャストやリメーク版タイトルは順次、発表する。宮藤は「すいません、キャスト発表できたら、もっといろいろ言えるんですが。キャストの名前、早く言いたい!」と、今後を期待させるコメントを口にした。