伊藤健太郎(24)が17日、東京・新宿ピカデリーで行われた2年ぶりの出演&主演映画「冬薔薇」(阪本順治監督、6月3日公開)完成披露上映会に登壇し「いろいろな意見、賛否があることは覚悟しています」とスクリーンに復帰し、登壇した思いを語った。

伊藤は、20年10月に自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕され、逮捕直後の20年11月に公開された主演映画「十二単衣を着た悪魔」では、初日舞台あいさつにも登壇できなかった。翌21年3月に不起訴処分となり、自身のインスタグラムで謝罪文を発表。同6月にファンクラブを立ち上げて芸能活動を再開し、同10月には主演舞台を上演していた。

「冬薔薇」は、以来2年ぶりの出演&主演映画。阪本順治監督が「十二単衣-」も製作・配給した、キノフィルムズから伊藤を主演に映画を撮ってみないかとオファーを受け、伊藤を1対1で取材。じっくりと話を聞く中で、順調だった俳優人生を暗転させた過ちと、その後の人生まで聞き出した。その上で作り上げ、伊藤のために書き下ろしたオリジナルの脚本は、同監督が伊藤との会話の中から感じたにおいや気配、独特の佇まいなどが色濃く反映されている。伊藤は「この期に及んで自分に隠すことはない。バーッと話すことが出来た」と阪本監督の取材を振り返った。

撮影は21年11月に行われた。伊藤は「クランクインの日、すごく怖い気持ちがあった。阪本組の、すごく温かい雰囲気で不安は取り除けた」と振り返った。その上で「今、僕が映画復帰という形で携わらせていただきました。いろいろな意見、賛否があることは覚悟しています。けど、公開するに当たって怖い部分はありますけど、あの時点で自分が出来る最大限の力は出し切ったつもりですし、自信を持って皆さんにお届けできると思っています」と胸を張った。

一方で、阪本監督の思いがこもった言葉を聞くと、涙腺が緩んだ。同監督は上映会の冒頭で「ちょっと感慨深いところがありまして」と口にしただけで、多くを語らなかった。その後、その理由を説明。

「伊藤君は、すごく演技できる喜びを語っていますけど、追い込まれる役どころで、僕も、ちょっと追い込んだところがあった。感慨深いって言ったのは、撮影が動きだした時、健太郎君を待っている人たちの前にお連れすることが私の仕事だったんで…今日がその日だと思って、何かこっちの方が感慨深くなってすみません」

伊藤は宙を見上げたが、涙をこらえきれずに下を向き、顔をゆがめた。

「冬薔薇」は、ある港町を舞台に、専門学校にも行かず半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳(伊藤)は、ガット船と呼ばれる船で埋立て用の土砂を運ぶ海運業を営む、両親の義一と道子の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らぬ人物のものだった、という物語。