「大食い」から「孤独のグルメ」まで、数多くの“飯番組”を手掛けてきたテレビ東京が、新感覚の「お取り寄せホームドラマ」を日曜昼に展開している。2クール連続ドラマ「よだれもん家族」(日曜午前11時)。団地を舞台にしたシチュエーションコメディーに登場する、リアルな人気お取り寄せ商品。仕掛けるのは、同局「制作局クリエイティブ制作チーム」で、数々の人気バラエティー番組を生み出してきた制作陣だった。同ドラマチーフプロデューサー伊藤隆行氏(49)とプロデューサー工藤里紗氏(41)を直撃した。【大友陽平】

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(1)きっかけは“テレ東版24時間テレビ”!?

伊藤 1年以上前、(企画・原作の)秋元康さんと「テレビ東京が24時間テレビをやるとしたら?」みたいな話をした時があったんです。それは“食べる”じゃないかと。確かにテレビ東京は食べ続けてきていて、一番食べてるテレビ局(笑い)。そこから「ご飯」が頭の中にありました。

工藤 ある日、伊藤から「ご飯だご飯だ、『サザエさん』だ、『やっぱり猫が好き』だ!」と言われ(笑い)。ビジネス、ビジネスしたものでもなく、ただお話を流しました…でもないものを考えようと。

伊藤 別で秋元さんと話す中で「この時代は、きっかけの時代」という言葉も印象に残っていました。ヒットといっても、テレビでいえば視聴率から、いろいろな形に領域が広がっていかなければいけない時代。多く見られているからはやっているのではなく、局地的にファンがいたり、売れ方が多様化しています。ドラマに出ればモノが売れるとか、そういうきっかけづくりというか、ドラマの手法自体は、配信も含めて、好きと思ってくれた方が見てくれるので、向いているし、やり方としておもしろいかなと思いました。

(2)なぜ“バラエティー班”がドラマ?

-伊藤CPは現在「モヤモヤさまぁ~ず2」「緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦」などを担当、工藤Pも「シナぷしゅ」「昼めし旅」などを担当。ドラマと決めたら、あとはドラマ担当に任せれば…

工藤 その意見は、正しいです!(笑い)

伊藤 いや、なんかドラマ班、忙しそうだったんですよ(笑い)。厳密にいうと、「班」というのはなくて、人数も少ないので、何でもやるんです。現実のバラエティーとドラマのはざまみたいな視点もありますが、こちらでやってみた方が新しいものが生まれるかな? と。やっちゃいます! って(笑い)。

(3)バラエティー班ならでは!

工藤 ご飯が魅力的なのはもちろん、会話劇もどういうテンポで笑いを入れていくか、クスッと笑える部分をどこに持っていくか、という部分はこだわっています。大事件は起きませんが、各エピソードの中にちゃんとフリとオチがあって、笑いがあって、ご飯が笑いの中に光るような…。

伊藤 ストーリーに“今”が入っていることも意識しています。例えば娘がSNSで隠れて配信してることって、父や母からしたらどう見えるの? とか、風刺的に描く場面もあります。誰もが1度は経験があるような、リアリティーのある「あるある」を入れ込んだり。打ち合わせで「それいいね!」と決めて、取り入れたりする行き当たりばったり感も、バラエティー班だからこそかもしれません。

-父役はドラマ初主演のさまぁ~ず大竹一樹(54)

伊藤 僕はリアルな大竹さんを知っているので…。本当にあのまんまの方で。天然な感じと、年齢と、結婚してお子さんがいる感じが、「いるよね、こういう人」とはまりました。

工藤 今の時代を描きたかったので、妻や娘にも嫌われたくない感じとか、ど~んと「お父さん!」という感じも違うなと。

伊藤 工藤も家庭があるんですけど、こう見えているんだろうな…と思う場面がたくさんあります(笑い)。やっぱり夫は、忖度(そんたく)の旅人なんですよ…(笑い)。

(4)激戦のお取り寄せプレゼン! 今後の展開は…

工藤 実は、お取り寄せグルメのプレゼンが一番大変です!(笑い)

伊藤 おいしいのはもちろん、ストーリーがあることも大事です。そこに人の心は動くので…。

工藤 人に語りたくなるものに説得力があります。2クールのドラマで約50種類が登場するのですが、調べた数も入れたら500個くらいの中から選んでます! ドラマに登場した「グルメマウンティングご近所さん」のような人は社内にもいまして…。そういった周りのグルメおじさんたちも、実は支えてくれています!(笑い)

-今後は

工藤 4人がどんどんおもしろくなっています。あの狭い団地のスペースで、限定されたシチュエーションですけど、飽きることなく、鮮度が上がっていくのを感じています。

伊藤 今のところ団地から出ていないので、外にも出て欲しいですかね。ああいう家族が独り歩きするような展開になったらおもしろいかなと思います!

◆よだれもん家族 4月10日にスタートしたテレビ東京で日曜午前11時開始のドラマ。現代のどこにでもありそうな団地を舞台にしたシチュエーションコメディー。「お取り寄せ」が大好きな間野(あいの)家の日常を描いた会話劇で、父・啓太を大竹、母・絵理子を宮澤エマ、居候する絵理子の兄を松尾諭(46)、大学1年の長女を長谷川百々花(15)が演じる。