宝塚歌劇団の月組人気スター鳳月杏が、主演作「ミュージカル・ロマンティコ『ELPIDIO(エルピディイオ)』~希望という名の男~」で、多彩な“顔”を見せる。公演は11月に神奈川での上演を終え、大阪市北区のシアター・ドラマシティで、3日に開幕。2度目の東上主演作は、大阪で11日まで。

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舞台は20世紀初頭のマドリード、傾いたスペイン帝国。鳳月は、生きる意味を求めてさまよい酒場にたどり着いた男にふんし、時には軍人、侯爵として芝居を運び、武器の色香にちゃめっ気を交え、硬軟両面の演技力をアピールした。

作・演出・振付は謝珠栄氏。国の将来を憂う男が集う酒場に「ロレンシオ」と呼ばれる男は、軍の大佐・アルバレス侯爵の館へ連行される。負傷した侯爵とそっくりゆえ、その“替え玉”として過ごすが、侯爵の妻パトリシア(彩みちる)に偽物と見破られる。

だが、居丈高な実際の侯爵と離婚協議中だったパトリシアは、偽侯爵のロレンシオにひかれていく。

そのロレンシオは「ELPIDIO」というペンネームで新聞に詩を投稿しており、詩書きの“顔”も持っていた。憂いを秘めた立ち姿を見せたかと思えば、仲間とおどけてジョークも飛ばす-。役柄、心情の機微を巧妙に演じ分けた。

鳳月は06年入団。月組に配属され、花組へ移った後、19年に古巣月組へ戻り、20年に「出島小宇宙戦争」で、東上作初主演。今回は、首都圏公演もある作品では2度目の主演となった。

役柄の心情に沿った演技プランで役作り、メーク、髪形から小道具、細かな動きまでこだわり、磨いた男役芸を披露している。

相手役ヒロインも、技量が確かな10年目娘役、彩みちるが好演。ロレンシオを兄と慕う仲間は、今年1月に雪組から移ってきた新人最終7年目の彩海せらが熱演を見せた。

大阪公演開幕前日の2日には、通し舞台稽古を終え「千秋楽まで完走できるようつとめて参ります」と、完走を誓い、主演作の幕を開けた。