第17回声優アワード授賞式が11日、都内の文化放送メディアプラスホールで開催された。席上で、2006年(平18)に創設され、17回目を迎えた今回から主演、助演、新人の男女別の賞を統合し、主演声優賞、助演声優賞、新人声優賞と、賞の名称を変更した意図について、改めて説明がなされた。

司会の文化放送・長谷川太アナウンサーは「女性が男性キャラクターの声を担当し、その逆も普通にあり得る。先駆けてジェンダーを飛躍した仕事」と声優業について定義づけた。そして、声優アワード公式サイトでも説明がなされたように「声優の賞であるということによりフォーカスでき、賞の意図が明確に伝わりやすくなると考えます。賞の目的である『声優の認知』が広がり、声優の地位向上に寄与できることを考え、今回の部門名称変更に至りました」と続けた。

今回の名称変更につながるであろう、一石を投じた発言があった。1年前の22年3月5日に同所で行われた第16回声優アワード授賞式生特番で、主演女優賞を受賞した緒方恵美がスピーチの中で、声優界からジェンダーフリーを進めていくべきと提言していた。緒方は「中の人(演じる声優)の性別と言われたが…もはや、そろそろではないでしょうか?」と問題提起した。そして「女優賞で良いんですか? 自分は、ずっと声優をやった年月、7割くらいを少年役の声優として過ごし、自分が女優と思ったことが、あまりない」と訴えた。そして「これだけジェンダーフリーと言われる世の中で、声優界もカミングアウトしている人もいる。私もそうですが、普段の生活でも、ほとんど女性と思って生活していない人間もいる」と続けた。

さらに「男優とか女優とかじゃなく、顔出しの業界(俳優)の皆様よりも、ジェンダーフリーを発信できるのは、むしろ声優じゃないかと思う。次回からは、男とか女とか、どうでもいいので2人ずつとか、そんな感じになったなら、よりいろいろなことになるんじゃないか」と提言。その上で「口幅ったいことになり、半分はご辞退したいなと思っていたのですが、作ってきた皆さんのために…。日本のアニメでは、主演の役を、このくらいの年齢の女優が演じることがない。そういう業界の中で、私がいただくことが影響があるんじゃないかと思い、素直に受けさせていただくことに致しました。偉そうに申し訳ありません。本当にうれしく思います」と語った。

声優アワード実行委員会では多様性の尊重、ジェンダーフリーに鑑み数年、議論を積み重ねてきたという。その議論に、1年前に主演女優賞を受賞した緒方が口にした「次回からは、男とか女とか、どうでもいいので2人ずつとか、そんな感じになったなら」と提言した言葉が、大きな影響を与えたのは間違いないだろう。名称変更後、初の受賞発表となった新人声優賞は梅田修一朗、直田姫奈、永瀬アンナ、日向未南、若山詩音が受賞した。梅田は「大きな1つの目標をいただき、光栄」、若山も「いただけると全然、思っていなくて心が、いっぱいになった。この賞に恥じぬよう頑張ってまいりたい」と喜んだ。