歌舞伎俳優市川猿之助(47)が自宅で倒れ救急搬送されてから一夜明けた19日、亡くなった歌舞伎俳優の父市川段四郎さん(76)と母喜熨斗(きのし)延子さん(75)の司法解剖が行われ、向精神薬中毒で亡くなった疑いがあることが分かった。猿之助は都内の病院を退院。一家心中を図った疑いも浮上し、事情聴取に「家族会議をした」と説明していたことも分かった。また、搬送4日前の生配信トークでは意味深な言葉を発していた。

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市川猿之助は、今の歌舞伎界で多くの観客を動員できる役者の1人だ。片岡仁左衛門、坂東玉三郎の人間国宝を別格として、中堅では市川團十郎と並ぶ人気を誇っている。

亀治郎時代にNHK大河ドラマ「風林火山」で武田信玄を演じたものの、当時は期待の若手の1人に過ぎなかった。その本領を発揮したのは4代目猿之助を襲名したときからだった。伯父から継承した「スーパー歌舞伎」をより進化させる一方、「ONE PIECE」など新たな観客を呼び込む公演を手がけた。

主演で何役も演じるのは珍しくなく、早変わりに宙乗りと、舞台を駆け回り、演出も担当した。そんな猿之助を見たくて多くの観客が駆けつけた。コロナ禍で観客が激減した歌舞伎座に毎月のように出演して、歌舞伎界の危機を救ったのも猿之助だった。

奮闘公演と銘打った今月の明治座公演は大入りで6月、7月、8月と公演が続き、来年には「鬼滅の刃」が決まっていた。猿之助一門だけでなく、有望な若手たちも猿之助との共演を熱望するようになった。人気はあったけれど、歌舞伎界では傍流だった伯父猿翁とは異なり、歌舞伎界のトップを目指す長いレースで先頭を走っていた。そんな猿之助がこんな形で離脱するとは誰もが思わなかった。【林尚之】