世界3大映画祭の1つ、第76回カンヌ映画祭の授賞式が27日(日本時間28日)フランスで行われた。是枝裕和監督(60)が、監督作「怪物」の脚本を手がけた脚本家の坂元裕二氏(56)が、初の脚本賞を受賞したことを受けて取材に応じた。その中で、「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督、日本公開未定)に主演し、初の男優賞を受賞した、役所広司(67)を祝福した。

是枝監督は「本当に、うれしいですよね、役所広司さんが…。もっと早く取っていても良かった、絶対に。もっと世界的な評価があっていい役者さんだと思っていました。それが、ここでこういう形で結実してとても良かったと思います」と心から役所の受賞を喜んだ。

役所は受賞後、応じた取材の中で「基本的には、自分たちの国の映画で世界の人に楽しんでいただけるのが、一番の早道かなと思っております」と、日本映画へのこだわり、愛を明確に示している。是枝監督は「何だろうな、ずっと一緒に、日本映画界をどうしていくみたいな話も、とても応援していただいて、会うと大体、本当は次の作品の話がしたいんですけど、『どうなってる?』って心配して声をかけていただいて」と感謝した。

そして「少しでも若い役者、若いスタッフがどうやってこの後、日本の映画界でちゃんと映画が撮れるようになるのかというのを気にかけていただいているので、そんな話を裏でして、写真を撮って、西川美和に送りました」と、ともに制作者集団「分福」で映画を作り、役所が主演した20年の映画「すばらしき世界」を手がけた、西川美和監督(48)にも伝えたと明かした。是枝監督は「(西川監督が)喜んでました」と笑った。

また、坂元氏からは「いや、メールだけなんですけどね」とメールが来たと明かした。是枝監督は「多分、起きてすぐ『怪物チームの1人としてうれしいです、感謝です』というのが来て、僕から『坂元さん、簡単なコメントいただけたらうれしいです。簡単じゃなくてもいいです』と送ったら、『えっ、今?』と。だから、『もう少ししたら囲みがあるので』と、これを前提にお願いしたら、すぐにきて、『たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です』と。そのあとまた寝たかもしれませんね」と、坂元氏とのやりとりを語った。

邦画のカンヌ映画祭での脚本賞受賞は、20年に初受賞した「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督(44)と大江崇允氏(42)以来3年ぶり2度目。

また、邦画がカンヌ映画祭の主要賞で同年度に複数の賞を受賞したのは、97年に役所が主演した「うなぎ」(今村昌平監督)が最高賞のパルムドールを、河瀬直美監督が「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラドール」を受賞して以来。26年ぶりの、邦画“2冠”となった。

一方で邦画として、是枝監督の邦画としての前作「万引き家族」が18年に受賞して以来となる、5年ぶりの最高賞パルムドール受賞はならなかった。