<第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞>

 SMAP稲垣吾郎(36)が映画「十三人の刺客」(三池崇史監督)で助演男優賞を初受賞した。第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が1日、決定した。稲垣は悪役初挑戦。冷淡な暴君を好演し「新境地を開拓した1年の最後に、こんなに素晴らしい賞をいただいて光栄だし、うれしいです」と喜んだ。また、三池監督が同じ「十三人-」で監督賞を受賞した。授賞式は28日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 稲垣が演じたのは、罪のない女性や子供を顔色一つ変えずに殺す将軍の弟。正義のために立ち上がった13人の刺客から命を狙われる。「静かなる狂気みたいなものが出ればいいかなと。13人の熱い男たちとの対比が出た方が面白いと思いましたし、この人なりにジレンマを抱えて生きてきて、僕の中では深い悲しみも出ればいいと思って演じました」。「静かなる狂気」が高く評価され、接戦続きの選考会では決選投票なしの圧勝だった。

 国民的人気アイドルだが、イメージを損なうリスクを伴う悪役に抵抗はなかった。「むしろすごくありがたかった。こういう悪役を自分ができるということを僕も気付かなかったですね。毎回、ヒーローしかできないのもつまらないしね」。主要キャストがそろった「十三人-」の製作発表では、初めて“アウェー感”も体験した。「面白かったですね。コイツを倒すためにオレらは頑張ってたんだ、という空気が伝わってきて(笑い)。今までみんなのゴローちゃんだったんで、何か気持ちいいですよ、逆に。快感ですね」。

 悪役初挑戦は「いい時期なのかな」と年齢的な理由も挙げた。「グループで支え合う力もあるので、冒険しちゃっても平気かなと」。不動の人気を誇るグループの安定感も、思い切ったソロ活動ができる理由と捉えている。

 数々の連ドラや映画に出演してきた。主演作や高視聴率を記録した作品もあったが、これほど大きな反響は初めてだった。中年の男性タクシー運転手に「良かったですよ」と声を掛けられた。共演した岸部一徳や松方弘樹ら名優にも褒められた。「日常生活の中でも業界の方にも言われましたし、やっぱり映画の力ってすごいなと思いましたね」と驚いた。

 出演中のフジ系月9ドラマ「流れ星」では、金のためなら妹の幸せを壊す兄を演じるなど悪役が続く。「この役から悪役イヤーになって、自分にとっては転機というか、新境地を開拓したようないい1年でした」。悪役開眼した「みんなのゴローちゃん」に対し、映像界全体から今まで以上に熱い視線が注がれている。【近藤由美子】

 [2010年12月2日9時23分

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