昨年7月にサイパン当局に逮捕され、身柄拘束中に首つり自殺を図り死去したロックバンドX(現X

 JAPAN)の元ベーシストTAIJIさん(本名・沢田泰司、享年45)の婚約者が、当時の女性マネジャーK氏を詐欺未遂罪の疑いで刑事告訴し、刑事事件に発展していることが24日、分かった。婚約者の代理人、福本修也弁護士は「悪質な振り込め詐欺だ」と主張。告訴状を受理した神奈川県警青葉署は、慎重に捜査を進めている。

 TAIJIさんの自殺から約1年を迎え、事態は急展開となった。告訴状によると、K氏は昨年7月11日以降、TAIJIさんがサイパン当局に逮捕され拘束中に、TAIJIさんの携帯電話を無断利用し、婚約者に「Kさんのクレジットカードを無断で使用したことが発覚して困っている」「訴えられたら犯罪者になってしまうので、使用分を支払ってほしい」などと虚偽のメールを数回送信した疑い。その後、K氏は自身の携帯電話から婚約者へ銀行口座を送信し、被害金額として計77万円を振り込むように要求したという。婚約者は振り込む直前、メールの文面などからK氏のなりすましであることに気づき、この事件は未遂で終わった。

 昨年7月11日、TAIJIさんは音楽制作活動のためK氏とサイパンへ渡航した。関係者によると、機内でK氏と口論となった後、窓をたたいたり、女性客室乗務員を蹴るなど暴れたため、サイパン当局に逮捕、拘束された。その後、拘束先でベッドのシーツを使って首つり自殺を図った。しかし、K氏はこれらの事実を同15日まで婚約者に一切告げなかったという。

 また、逮捕直後、TAIJIさんの公式ブログと所属事務所の公式HPが全て削除されるなど不明な点が続いた。関係者によると、K氏はTAIJIさんが自殺を図った直後、再びTAIJIさんの携帯電話を利用し、バンド仲間から届いたメールに対して、逮捕や自殺の事実を隠し「婚約者とけんかした」と虚偽のメールを10件近く送信していたという。

 このようなことから、婚約者は昨秋、詐欺未遂に該当するとし、刑事告訴に踏み切った。関係者は「現在、K氏はサイパンで有名なリゾートホテルなどの経営に携わり帰国していないため、事情聴取が進んでいない」と説明する。福本弁護士は「K氏の行為は悪質な振り込め詐欺である。不可解な点も多く、その背景にあるTAIJIさんの死の真相を追及していきたい」と話した。

 ◆TAIJI(タイジ)本名・沢田泰司。1966年(昭41)7月12日、千葉県市川市生まれ。86年、YOSHIKIに誘われX(現X

 JAPAN)に加入。89年、メジャーデビュー。92年1月の東京ドーム公演終了後、脱退。同4月、ラウドネスに加入も翌93年に脱退。94年には、自身でDirty

 Trash

 Roadを結成。以降、妹とバンドを組むなど、いくつかのバンドを立ち上げ音楽活動を続ける。11年7月17日、死去。血液型A。<事件経過>

 ▼11年7月11日

 成田空港からK氏とサイパンへ出発。機内でK氏と口論後、女性客室乗務員を蹴るなどし、サイパン当局が業務妨害で逮捕、拘束

 ▼同14日夜

 拘束先でベッドのシーツを使って首つり自殺を図り、意識不明の状態で救急病院へ搬送。K氏が再び、TAIJIさんの携帯電話を使用し、バンド仲間へ「婚約者とけんかした」と虚偽メールを送信

 ▼同15日

 K氏が婚約者に、初めてこれまでの事実を連絡

 ▼同16日夜

 家族と婚約者がサイパン入り。脳死状態のTAIJIさんと対面

 ▼同17日昼

 家族の同意を得て、生命維持装置が外され、死去