<連載「気になリスト」(32)>

 BS-TBSで10年続く人気番組「吉田類の酒場放浪記」(月曜午後9時)で、酒場詩人として全国の大衆酒場を紹介するのが、吉田類(年齢非公表)だ。

 取材場所は東京・足立区梅島の大衆酒場「こんちゃん」。12月2日放送の特別番組の収録が行われていた。番組関連書籍、DVD、CDに携わったスタッフに加え、店の常連も集まり、にぎやかな忘年会の様相だ。吉田がカメラに向かって何か話しているが、周りのざわざわは変わらず、自然な雰囲気で収録が進んだ。「10年間続いたのは無理せんこと。自然体でいることは全然変わってないよ。面白がってもらえるのはありがたい」。

 番組には台本はない。酒場を楽しむ吉田と、客たちとの交流を自然に映す。牛久保剣プロデューサーも「吉田類は天才。お客さんとの距離の取り方、楽しくておいしいことの表現。ずっと変わりません」と言う。

 開始当初は、さまざまな趣味を取り上げるコーナー番組の1つだった。旅、グルメなどがあり、その1つが酒場。じわじわ人気になり、4年前に放送時間と曜日が固定された。今年9月の10周年イベントには、70組の参加募集に4000通の応募があった。

 最近、子供のファンも多い。吉田は「家族で見てくれてるのを感じる。これは小学5年生の女の子が作ってくれたお守り」と、ビールジョッキと自身の似顔絵を合体させたブローチをうれしそうに見せてくれた。酔いも進んで上機嫌だ。

 番組のおかげで、うれしい偶然もあった。金沢に行った時、空港で憧れていた仲代達矢に会った。仲代も番組のファンで、酒談議になったという。

 幸い年齢を重ねても酒に弱くなったということもない。「ますます強くなりました。ストレスためずに飲んでるから。100歳まで番組を続けたいですね」。

 登山も趣味で、主に北海道の山々を登っている。「夢はヒマラヤでウイスキーを飲むこと。ヒマラヤで『酒場放浪記』の番外編をいつかやりましょう!」。周囲を明るくするパワーも夢も大きい。【小林千穂】

 ◆吉田類(よしだ・るい)高知県生まれ。イラストレーターとして活動を続ける中、90年代から酒場や旅をテーマに執筆活動を始める。03年に「吉田類の酒場放浪記」を開始。13日に番組のサウンドトラックがリリースされ、エンディングテーマのブルース「BAD

 BAD

 WHISKY」をカバーして歌手デビュー。血液型O。