10月15日から新聞週間。16日には、松江市で開かれた第79回新聞大会で今年度の新聞協会賞が贈られた。

その協会賞、今年は興味深い地殻変動が起きている。

大賞ともいえるトップには「カツアゲ」が流行語になった西日本新聞の「調査報道『歪んだ関係-福岡県政を追う』」が選ばれた。

そのほかの受賞記事には、旧優生保護法下で起きた過酷な人権侵害を追った京都新聞。それに「SNS狂騒選挙」とも呼ばれた兵庫県知事選を長期取材した神戸新聞が選ばれるなど、九州のブロック紙や、地方紙がずらりと並んだ。

さらに今年度の締め切りには間に合わなかったが、熊本日日新聞の陸上自衛隊現地情報部隊による情報収集。学者や文化人、報道関係者らの思想をはじめ、性的嗜好(しこう)まで調べ上げているというスクープがいま、新聞界で話題になっている。

その熊本日日は、広くこの事実を知ってもらおうと、自社の電子版を無料にして公開する体制を取っている。

電子版の開放といえば、「予算削ってやった」で更迭された簗前農水相の地元、栃木の下野新聞も、簗氏の自民党支部での発言音声を無料公開している。

まさに地方紙の時代という気がするなか、全国紙はどうした、と思っていると、朝日が思い切りのいい対応に出た。9月12日朝刊1面トップ。「この問題は熊本日日新聞が7月下旬に報じた」と断った上で、陸自の情報収集を大きく報道した。

その朝日が後追い記事を書くに至った経緯にふれた西山公隆氏の「編集局長便り」が、また小気味いい。

<抜かれるたびに悔しさが先に立つが…時には、ぐうの音も出ない。それどころか「よくぞ抜いたなあ」と称賛の気持ちがわいてくるような「抜かれ」もある>

いいぞ、ご同輩。同業他社だった不肖私も、何度同じ思いを味わったことか。

2、3位が奮闘し、それを上位が称賛しつつ後を追う。CSを思わせるメディア界2026の秋である。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。東海テレビ「ニュースONE」静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」などに出演中。