伊豆諸島の鳥島東方海域で海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が訓練中に墜落、1人が死亡し7人が行方不明になった事故で、木原稔防衛相は22日、2機のフライトレコーダー(飛行記録装置)からデータを取り出せたと明らかにした上で「現時点で、飛行中の機体に異常を示すデータはなかった」と述べた。東京・市谷の防衛省で記者会見した。

飛行記録装置は海自厚木航空基地(神奈川県)で解析中。2機は衝突した可能性が高く、海自は訓練に参加していた艦艇の乗組員や同時に飛行していて無事だったヘリ1機の搭乗員からの聞き取り調査も行い、事故原因の解明を本格化させる。

木原氏は会見で、自衛隊の全航空機で飛行前の点検を入念にし、安全管理や緊急手順の教育を改めて実施するなどの指示を21日付で出したと述べた。海自と海上保安庁は22日も24時間態勢で行方不明者や機体の捜索を続けた。

関係者によると、事故当時は、海自護衛艦隊部隊トップの護衛艦隊司令官が定期的に部隊の作戦遂行能力を確認、評価する「訓練査閲」中だった。第4護衛隊群(広島県)所属の第4護衛隊(同県)と第8護衛隊(長崎県)を中心とした計8隻の艦艇と潜水艦1隻、ヘリ6機が夜間の対潜水艦戦の訓練に参加した。

ヘリを入れ替えながら行っており、当時は墜落の2機を含め3機が飛行。海自トップの酒井良海上幕僚長は「もう1機は事故機の状況を客観的に見られる立場にあったと思う」としている。

岸田文雄首相は22日の衆院予算委員会で「重大事故の発生を重く受け止める」と述べ、行方不明者の捜索を急ぎ、自衛隊機の安全な運航に万全を期す考えを示した。

墜落現場は鳥島の東約270キロで、水深は約5500メートル。機体が海底に沈んでいる可能性があることから、海自は位置特定のため、海底の地形などを測定する海洋観測艦を投入する方針だ。これまでに回転翼のブレード(羽根)や機体の一部などが見つかっている。

海自によると、20日午後10時38分ごろ、訓練に参加していた大村航空基地(長崎県)所属の1機の通信が途絶した。海自は、この直前に小松島航空基地(徳島県)所属の1機との衝突が起きた可能性が高いとみている。(共同)