日銀の植田和男総裁は26日、政策金利の維持や国債購入の継続を決めた金融政策決定会合後に記者会見し、足元の円安進行について「基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていない」との認識を示した。当面は「緩和的な金融環境が継続する」とも説明し、日米の金利差が縮小しないとの見方から円相場は会見中に一時1ドル=156円台後半に下落した。

植田氏は今後について、円安が物価に無視できない影響を与えた場合は「金融政策の判断材料になる」とも語った。

日銀はこの日、経済や物価の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表。2024年度の消費者物価上昇率は前年度比2・8%、25年度と26年度はいずれも1・9%と見込んだ。賃金と物価がそろって上がる好循環が続くと判断した。

植田氏は会見で、物価上昇率が日銀の予想通りに推移すれば「政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べ、物価情勢を点検した上で追加利上げを判断する考えを示した。

追加利上げをする場合は住宅ローン金利などに影響が出ることを踏まえ、慎重に判断するとした。利上げの具体的な時期は「特定の考えを持っているわけではない」とした。

日銀は長期金利の上昇を抑制するために大量の国債を購入してきたが、植田氏は将来的に購入額を減らす方針を示している。会見では減額する時期を「申し上げられる段階にない」とした。3月に大規模な金融緩和策から転換した影響が国債市場にどう出るかを見極めていると説明した。(共同)