千葉県成田市で、母子2人がライオンにかまれ、重傷を負う事故があった。23日午前11時5分ごろ、千葉県成田市の「湘南動物プロダクション」で、撮影のためにライオンの体を洗っていた女性経営者(55)と息子で役員の男性(28)が顔や首、腕などをかまれた。同社は、ソフトバンクのCMに出演している北海道犬「カイ」が所属する大手プロ。県によると、敷地内ではライオン10頭などを飼育していた。県は事故を受け、同社に立ち入り検査を実施。経営者の回復を待って、管理状況を調査する方針だ。

 ライオンは、撮影に向け、体を洗われていた際に牙をむいた。午前11時5分ごろ、「飼育員がライオンにかまれた」との119番通報があった。県警成田署によると、湘南動物プロダクションの女性経営者と息子の男性が、頭から腕の上半身を中心に何カ所もかまれ、重傷という。

 署によると、同社のライオンのおりは10メートル四方以上の広さ。雄用と雌用に中で2分され、雌雄のおりの中も1頭ごとの個室と広い洗い場に分かれている。経営者らは3人で、ライオン1頭を洗い場に出し、鎖で柱につないで洗っていた。男性がライオンの下半身を洗うと、ライオンが突然振り返り、かみついた。経営者は男性を助けようとして、襲われたという。

 一緒にいた20代女性の飼育員は無事だった。ライオンは10歳の雄とみられ、逃げなかった。3人は普段から、ライオンを洗う作業をしていたという。

 現場は成田空港北側の畑などが広がる丘陵地帯。近隣住民には、ソフトバンクのCMに出演している「お父さん犬」がいるプロダクションとして知られていた。近くに住む女性は「ライオンがいるのも知っていた。夕方、エサの時間になると、映画やテレビで見るライオンと同じ声でほえていた」と話した。

 ライオンやクマなどの猛獣は、動物愛護法で「特定動物」に指定されており、飼育施設などの要件を満たし、都道府県知事の許可を受ければ、個人でも飼育は可能だ。千葉県によると、同社では雄6頭、雌4頭の計10頭のライオンの飼育許可を受けていた。

 県は事故を受け、動物愛護法に基づき、立ち入り調査を実施。担当者は「施設の安全性には問題ない」とする一方「ライオンを洗う際の安全管理状況については経営者の回復を待ち調査したい」としている。

 プロダクションのホームページによると、同社所属のライオンは缶コーヒーのCMやテレビドラマなどに出演。ニホンザル6頭、ワニ4頭なども飼育しているほか、オオカミ、シマウマ、ラクダなどもリストに名を連ねている。【清水優】

 国内の動物園89施設が所属する日本動物園水族館協会(本部・東京)の担当者のコメント どう猛なライオンに限らず、職員が野生動物を洗うという作業は、動物園にはありません。体を洗われることが、野生生活にはないからです。ゾウやトリの水浴び、サルやカピバラの入浴など、体が洗われる行為はありますが、すべて動物が自分で能動的にしていること。人間に強制されることはありません。