迎えた撮影の日、「切腹する」つもりで現場に行った。男性10人ほどに囲まれての撮影。途中で無理だと言っても「ここにいる大人も、子どももいれば生活があるんだよ」と聞いてもらえない。泣きながら、耐え続けるしかなかった。

 2本のAVを撮影し、しばらくしてスカウトだった男性に呼び出された。「社長が金を持ち逃げした。他の女の子からも苦情が来ている」。そして、新事務所への「移籍」を勧められた。移籍先の芸能事務所は「所属タレントが全員AV女優さん。その事務所の社長が、そのスカウトさんだった」。

 そのまま最初の契約の期限が過ぎた。警察から、「事務所のことで話を聞かせてほしい」との要請もあったが「思い出したくなかったから断った」という。

 時間がたっても、被害を言い出せなかった。出演していたことがばれないか、いつも心配だった。しかしニュースで、同様の被害に遭っている女性がいることを知った。1人でも新たな被害を防ぐことができるかも知れない。そんな思いで、被害経験を明かすことを決めたという。「夢のためと言って、人の言うことを私以上に100%信じちゃう女の子っていると思うんです。でも、本当に巧妙にだます人はいる。だから、気をつけてほしい」。さまざまなイベントに顔を出して被害を明かし、そう呼びかけている。