食事は、居酒屋の大河原さんと、鮮魚の刺し身も店で出していたために調理師免許を持っている渡辺さんが作る予定だ。雑貨の坂本さんはアメニティー関係、衣料品店の小林さんは布団などの寝具などを担当。スナックの佐藤さんはラウンジ、ディーラーの渡辺さんはフロントを担当する。林さんは、水戸市のホテルで、掃除、ベッドメークから従業員の管理まで、ホテルマンや運営方法の研修を終えた。

 林さんは「今までやってきた市場の競りとは違いますが、お客さんと接する仕事という意味では一緒」と自信を見せる。

 渡辺さんたちの熱意に、20代の複数の若い町民も「働きたい」と声を上げ始めた。

 ターゲットの客層は町内に家があった町民から、廃炉関係の研究者、そして、被災地ツーリズムの一般観光客を意識している。ホテルのキャッチコピーは「フクシマ 最前線」。富岡町、双葉郡、福島県の現実を間近に体感してほしい。「興味本位、大歓迎」とうたい、現実を見てもらう拠点にしたい。それが、町の将来につながる。そう信じている。【清水優】

 ◆富岡町と浪江町の避難指示区域の現状 富岡町は全域が避難区域になっているが、来月1日に放射線量が高い帰宅困難区域を除き、居住制限区域と避難指示解除準備区域を解除する。両区域では、帰還に向けて約300人が準備宿泊を始めているが、解除対象の約3%。帰宅困難区域では、約1600世帯の約4000人が生活していた。

 全域に避難指示が出ている浪江町も、同様に帰宅困難区域以外を今月31日に解除する。解除対象は約5800世帯の約1万5000人。福島第1原発から北西方向に帰宅困難区域が広がり、町域の約80%。この区域に住んでいた町民約3000人は、事前予約しないと一時帰宅できない。