東京電力福島第1原発の事故から11日で6年。4月1日に帰還困難地域を除いて避難指示が解除される富岡町では、8人の町民たちが今秋のオープンを目指し、ホテル経営に乗り出した。食料品店、青果市場、居酒屋、衣料品店、自動車ディーラー、雑貨店、スナック…。富岡駅前に建設中のホテルの名前は、ずばり「富岡ホテル」。さまざまな業種から集まった8人は、力強く前を向いている。

 津波で流されたJR富岡駅には、まだ駅舎がない。線路の海側には、除染ゴミの黒いフレコンバッグが詰まれ、その先には除染ゴミなどの処理施設が見える。町を襲った津波と放射性物質からの復旧。マイナスからの回復はまだ途上にある。

 ただ、1区画だけ、震災と事故前より、プラスへ進もうとしている工事現場がある。駅前の「富岡ホテル」建設現場だ。基礎工事を終え、真新しい4階建てのビジネスホテルの建設が始まった。

 富岡町の個人事業主8人で「富岡ホテル株式会社」を立ち上げた。社長の渡辺吏(つかさ)さん(58)は、駅前の食料品店「誠屋」の2代目。全町避難後、大玉村の仮設住宅で、避難住民向けの仮設店舗を開店。一緒に店を営んだ富岡青果市場の林芳典さん(55)と居酒屋「いろは家」の大河原宗英さん(53)の3人で「いつか、富岡で何かしたいね」と語り合ってきた構想が出発点だ。