将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)が15日、自身の持つデビュー後の連勝記録を「26」に更新した。大阪市の関西将棋会館で指された順位戦C級2組で先手の瀬川晶司五段(47)を108手で破り、歴代最長の連勝記録となる神谷広志八段の28連勝(87年)にあと「2」に迫った。

 午前10時から始まった対局は午後10時53分に終わった。長時間の対局を終えた藤井四段は「ここまで連勝できるとは思ってもみなかった」と笑顔を見せた。

 藤井四段は4月4日にデビュー後11連勝を達成し、プロ公式戦の新記録を樹立。10日には第3期叡王戦段位別予選で、梶浦宏孝四段(21)、都成竜馬四段(27)を破り、歴代単独2位となる公式戦連勝記録を25に伸ばしていた。

 この日の順位戦は藤井四段にとって大きな目標への初戦だった。将棋界で最も歴史のあるタイトル戦「名人」。その称号は江戸時代からある。

 将棋界は名人を頂点にA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5クラスあるピラミッド構造。最上位のA級にいる10人(今年は11人)が約1年かけてリーグ戦(順位戦)を戦い、優勝者が名人への挑戦者となる。名人へ挑戦できるのはA級のトップのみ。

 デビュー間もない藤井四段は5クラスの中で最も低いリーグC級2組からスタート。最短距離でも5年かけないと、名人戦の挑戦者にはなれない。棋士として、他の最短1年で挑戦できるタイトル戦とは違い、長い戦いとなる名人への戦いに初めて足を踏み入れ、谷川浩司九段以来、40年ぶりに中学生棋士として順位戦を戦った。

 瀬川五段は「僕が先輩ですが、(藤井四段が)格上のつもりで思い切っていきました」と話した。瀬川五段は1984年、プロ棋士の養成機関・奨励会に入った。26歳までに四段昇段という条件を満たせず、96年に退会し、サラリーマンに。しかしアマ代表として参加したプロ棋戦でプロ相手に勝率7割以上の好成績を挙げ05年、35歳で特例のプロ編入試験に合格した異色の経歴の持ち主。敗れたが、瀬川五段は「僕は負けましたが、ぜひ連勝記録を伸ばしてほしい」とエールを送った。

 次戦は17日、朝日杯将棋オープン戦で学生名人の東大1年、藤岡隼太アマ(19)と対局する。