2020年東京五輪・パラリンピックの機運醸成を目的につくられた「東京五輪音頭2020」を使用した盆踊り大会が14日、初めて東日本大震災の被災地で開催された。

 福島県いわき市内郷地区で63年目を迎えた「いわき回転やぐら盆踊り大会」。東京電力福島第1原発事故の避難者が多く移住した地域でもある。地元住民は「復興五輪」を活用し、震災から6年5カ月が経過しても残る問題を少しでも解消したい考えだ。

 同盆踊り大会の実行委内に昨年「東京五輪応援委員会準備室」を設置した。日本一といわれる高さ13メートルの回転やぐらで実施する盆踊り大会そのものを、20年夏に都内で開催する壮大な構想を実現するためだ。あまりに巨大なため、都内に組み立てる際は3分の2程度に抑えるという。

 いわば“出張盆踊り”に湯沢良一室長(53)は「企業などは復興の形が目に見えやすいが、一般市民には目標や期限がないと分かりづらい。20年東京大会を大きな目標に据え、心の復興につながればと思っている」と語る。

 元のいわき市民と避難者が原発補償の有無により分断されている問題は、現在も根深く残っている。「これまでも復興事業はあったが、終わればまた両者の交流がなくなるという繰り返しだった。20年東京大会なら誰もが知っていて期間も長い。一緒にやり遂げたい」と湯沢室長。今は希望制の盆踊り運営チームを来年からは地域の代表制にし、両者が共同作業できる環境づくりに取り組む。

 行動は速い。先月31日、大会組織委員会が実施する「東京2020応援プログラム」の認証を取得。この日、組織委自体も現地を訪れ、08年北京、12年ロンドン五輪に出場した元競泳日本代表の伊藤華英氏(32)が振り付け指導を行った。伊藤氏は「東京2020と福島の伝統ある盆踊りが共に行動できることが良かった」と述べた。

 同市は東京都港区と友好都市協定を結んでおり、同区内の広場を借りて、盆踊りを開催したい方針。20年7月24日の五輪開会式より2、3日前に実施したい考えで「いわきが復興した姿を世界の人に見てもらい、それを機に、多くの観光客がいわきに来てもらえたら」と湯沢室長。残り3年を切り「復興五輪」がどのような形で生かされるのか-。1つのモデルケースとして注目される。【三須一紀】