スウェーデン・アカデミーは日本時間5日夜、今年ノーベル文学賞を発表した。有力候補とされていた作家村上春樹氏(68)は受賞を逃した。

 村上氏が作家デビュー時にジャズ喫茶を経営していた、東京・千駄ケ谷にある鳩森八幡神社は、カウントダウン・イベントを開催。「ハルキスト」と呼ばれるファンや地元の住民約200人がパブリックビューイング(PV)で発表を見守った。

 受賞者が日系英国人のカズオ・イシグロ氏ということもあり、「えぇー」という困惑の声や、複雑な表情が広がった。それでも、日本生まれのイシグロ氏を祝福するクラッカーが鳴ると、会場は大きな拍手に包まれた。

 同イベントの音頭をとり、村上氏が千駄ケ谷で親交があった書店「ブックハウスゆう」の店主斎藤祐(たすく)さん(72)は「残念だけど、日本の血を引いた人だから我慢します」と複雑な表情を見せた。ただ、村上氏とイシグロ氏の作品は文体や思想が似ているとして「何かの間違いじゃないかと思った。どうしてイシグロさんなのか」と悔しさを隠せなかった。

 早稲田大3年の後藤真歩さん(20)は、村上氏が当時在籍していた「第一文学部」が再編された「文化構想学部」に所属している。「私は春樹さんが好きで早稲田に入ったのでショックです。ただ、イシグロさんが評価されるということは、春樹さんにもチャンスがあるということ。来年に期待します」と前を向いた。