17度目の衆院選で、初めて無所属で出馬した自由党の小沢一郎共同代表(75)は13日、地元の岩手3区に入った。街頭に立つことはなかったが、「公示4日目に地元入りしたのは初めてです」と明かし、強い危機感をにじませた。自民党前職の藤原崇氏と一騎打ち。自民党は公示日に安倍晋三首相、この日は小泉進次郎筆頭副幹事長が応援に入り、世代交代による「剛腕」の追い落としを狙う。

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 常に政界再編の主役で「剛腕」の名をほしいままにしてきた小沢氏が、無所属の戦いを続けている。この日は、岩手県内の連合、ゼンセンなど支援労組、共闘態勢を取る共産党、社民党をあいさつ回り。夕方に地元の奥州市に入った小沢氏は、約100人の支援者を前に「描いていた絵とは違います。野党の不備もあって劣勢が伝えられていますが、あと1週間の選挙戦でなんとか自民党を過半数割れに追い込みたい」と訴えた。

 民進党を中心に野党の結集を図り、3度目の政権交代を果たす選挙にするつもりだった。しかし、希望の党・小池代表による「排除の論理」で民進党は2つに割れ、自由党も希望の党、立憲民主党、無所属に三分。小沢氏は自由党の共同代表を務めていることもあり、新党に合流せず、無所属出馬の道を選んだ。報道陣に「誤算だったか」と尋ねられると、「残念な結果ですけど、いまさら悔やんでもしょうがないので最後まで最善を尽くしたい」と率直に答えた。

 公示後としては最も早く、初めて4日目に地元入りした。「選挙情勢も厳しいし、皆さんにお願いのあいさつをしようということです」と明かした。陣営でも「選挙カーが1台しかなく、思うように選挙区を回れない」と、無所属の戦いの厳しさを打ち明ける。

 17選を果たし、19年12月まで務めれば史上6人目の在職50年議員になる。77歳7カ月は中曽根康弘氏(78歳11カ月)の記録を更新し、最年少での達成となる。だが、選挙は厳しくなっている。かつては「小沢王国」と呼ばれ、政権交代を果たした09年は13万3978票を集めたが、12年は7万8057票。14年は3日間で33カ所街頭に立ち、「異常事態」と支持者を驚かせたが、7万5293票。藤原氏に1万7469票差まで迫られた。

 前回2万4421票を獲得した共産党は擁立を見送り、小沢氏を支援する。しかし、自民党は安倍首相、進次郎氏と大物、人気者を送り込み、「岩手もそろそろ世代交代を。若い藤原さんに」と訴える。小沢氏は今日14日から再び全国の仲間の激励に回った後、来週後半は地元に張り付く予定だ。【中嶋文明】

 ◆小沢一郎(おざわ・いちろう)1942年(昭17)5月24日、岩手県水沢市(現奥州市)生まれ。慶大卒。69年に27歳で衆院初当選。田中角栄元首相の薫陶を受け、自民党で若くして頭角を現す。自治相、自民党幹事長、官房副長官のほか、新進、自由、民主各党の代表などを務める。趣味は囲碁。著書に「日本改造計画」など。

 ◆衆議院小選挙区の岩手県の区割り改定 計4区から3区に減り、定員は4人から3人に減る。新設の岩手3区は、旧岩手4区(花巻市、北上市、奥州市、西和賀町、金ケ崎町)に、旧3区の一関市と平泉町が加わった。

<「無所属」不利あれこれ>

 ◆重複立候補 無所属は比例代表との重複立候補はできず、復活当選はない。

 ◆選挙カー 公認は政党用と合わせ2台使用できる。無所属は1台。

 ◆公費広告 無所属は5回以内。公認は政党候補者一覧広告でも新聞に登場。

 ◆政見放送 無所属は政策を訴えることはできず、経歴放送のみ。

 ◆ポスター 無所属は指定掲示場のみ。公認はプラス選挙区内の任意の場所に1000枚。

 ◆事務所 無所属は1カ所。公認は政党分と合わせ2カ所。

 ◆ビラ 無所属は7万枚。公認は政党分4万枚と合わせ11万枚配布可。

 ◆はがき 無所属は3万5000枚。公認は政党分2万枚が加わる。