「1票の格差」を是正するための区割り再編で、弊害が出ている。東京都港区のJR田町駅は、西口を出ると東京1区、東口は2区。電車のホームが選挙区の「境目」だ。これまでは駅の周辺一帯(港区全域)が1区だっただけに、近隣住民には混乱が広がり、区も対応に追われている。

 東口を出てすぐの「芝浦商店会」は、もろに影響を受けた。同会は約150店舗から構成されるが、新たな区割りで約7割の店が集まる芝浦1~3丁目が2区に編入され、4丁目だけが従来通り1区。商店街が2つの選挙区に分断された。同会の藤田克二会長(66)は「今後の会の運営に直接の影響が出るかは分からないが、町が半分に分かれてしまった気がする」と戸惑いを隠せない。22日の投開票日は近づいているが、「2区の立候補者3人とは面識もないが、当選した人にはとにかく町を知ってもらいたい。祭りやイベントにも顔を出してほしい」と希望した。

 港区の選挙管理委員会も頭を悩ませている。同区の有権者は全体で約20万人。そのうち北東部に住む3万1415人が2区に入った。投票所への入場整理券と一緒に「自分はどちらの選挙区か」を明確に示したチラシを送付するなど、対策を講じたが、すでに始まっている期日前投票の会場では「知らなかった」という声も出た。港区が新区割りの対象だと理解していても「自分は関係ない」と思っている人も多いという。

 1、2区どちらの有権者も受け付ける投票所が、今回はできる。その会場では、まず入り口で整理券を確認して、投票所内のエリアも2つに分けて対応する。万が一の投票トラブルを防ぐためだ。区選管の井上茂さん(52)は「今まではなかった手間も増えている。有権者も関心を持って、調べてから投票に来てもらいたい」と呼びかけた。

 今回から2区に編入された地域で30年以上暮らす70代女性は「私はもう(期日前)投票したけど、分かりにくいから投票に行く人が減るのでは」と懸念。東京1、2区はどちらも接戦で、「1票の価値」は重い。全国で過去最大規模の区割り見直しで、悪影響は隠せない。【太田皐介】

 ◆区割り改正 今回の衆院選から「1票の格差」を是正するため、7月施行の改正公選法に基づいて19都道府県の97選挙区で区割りが見直された。議席数は、小選挙区が289、比例代表が176で、合わせて465議席になった。前回の衆院選から10削減され、戦後最少。東京でも9、15、18、20区を除く21選挙区が対象になった。

 ◆田町駅(たまちえき)1909年(明42)12月16日開業。所在地は東京都港区芝5丁目。江戸時代に周辺の田畑が町に変わり、「田町」という地名があったことが駅名の由来とされる。JR京浜東北線と山手線が停車。昨年の1日平均乗車人員は15万2624人。