安保法制の強引な審議や、森友&加計学園の問題で指摘された「忖度(そんたく)&お友達政治」。内閣支持率を不支持が上回る中でも、安倍晋三首相(63)は「1強」の立場を保った。22日夜、党本部で各社のインタビューに応じた首相は、「まだ厳しい(有権者の)視線があるのは事実。勝利には、謙虚に向き合っていきたい」と、控えめに話した。恒例の当確者へのバラ付けでも、笑顔はなかった。

 首相は今回、与党で過半数と相当低めの目標設定。ふたをあければ、自民は改憲勢力で、憲法改正の発議に必要な3分の2(310議席)を確保した。ただ、希望の党の失速で、野党共闘が不完全になり、野党の敵失による「漁夫の利」なのは誰の目にも明らかだ。首相も「私どもに厳しい風が吹く中、そういう声を立憲民主党が吸収した」と認め、「野党と建設的な議論を進めたい」と述べた。

 首相自ら「国難突破解散」と命名した、衆院解散。北朝鮮情勢や少子化対応で、国民の信を得たいと説明した。野党が再三求めた臨時国会召集に応じたと思えば、冒頭解散。森友&加計問題で、国会で野党に追及されるのを避けたかった面は否めず、「大義なき解散」は明白だった。

 首相は先月28日の解散直後、東京・渋谷で街頭演説に立ったが、告知は一切なし。その後も遊説場所を告知しないケースがあり、「ステルス遊説」と批判された。7月の都議選最終日、東京・秋葉原の演説で、「安倍辞めろコール」に「こんな人たちに負けるわけにいかない」と発言し、批判されたのが、トラウマになったとされる。

 情勢調査では自民党の堅調さが伝わった。首相の訴えは強気さを増し、希望の党や立憲民主党を念頭に、「選挙のためだけに看板を変える政党に、日本の安全、子どもたちの未来は任せられない」と、痛烈批判。情勢が緊迫する北朝鮮に対しても「脅しには屈しない」と強調。21日に因縁のアキバで遊説した首相が、「辞めろコール」に動じることはなかった。

 首相は、3選を目指す来秋の党総裁選については「まったく白紙」と述べたが、大きく踏み出した。3選なら20年東京五輪・パラリンピックを首相として迎える。悲願の憲法改正は「時期ありきではない」と慎重に進める構えだ。森友&加計問題は、「1強継続」で立ち消えになる可能性もあるが、首相は「丁寧な説明を繰り返してきた。今後も丁寧に説明したい」と、約束した。【中山知子】