将棋の最年少プロ、藤井聡太六段(15)が8日、大阪市の関西将棋会館で指された第68期王将戦1次予選2回戦で、師匠の杉本昌隆七段(49)を111手で破った。将棋界では弟子が師匠に勝つことを「恩返し」といい、藤井が公式戦初の師弟対決で恩返しをした。公式戦通算は69勝11敗。昨年6月に樹立した29連勝に次ぐ14連勝を飾った。

 師匠を相手に伸び伸びと指した。盤上では対等であり、ライバル。午前10時から始まった師弟戦は同一局面を4回繰り返す「千日手」となり、午後から指し直し局がスタート。中盤まで一進一退の攻防が続いたが、藤井は終盤に厳しい手を連発し、投了に追い込んだ。「すごく楽しみにしていました。対局中はいつも通りの気持ちでいきました。とてもいい経験になりました」と笑顔で振り返った。

 小学4年で入門。杉本は極力、藤井との対局を避けた。「プロのセオリーであったり、こういう指し方のほうが勝率が高い、そんな教え方をしないほうがいい。自分で考えて結論を出してほしかった」。育成法は間違っていなかった。弟子の成長を感じ取った杉本は「勝負は残念ですが、すばらしい1日になった」。

 藤井はこの日の王将も含め、竜王、王座で勝ち残っている。屋敷伸之九段(46)の持つ最年少タイトル獲得記録(18歳6カ月)を1年以内に破る可能性も十分にある。師匠の故板谷進九段の扇子を持って対局に臨んだ杉本は言う。「最年少タイトルは藤井に与えられた使命」。東海地区にタイトルを-。藤井が師匠らの悲願をかなえる。【松浦隆司】